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                No.3 分娩前の牛の食欲低下① | 
               
             
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               2021年9月30日 
              鹿児島での研修を終え、栃木に戻ってきました。短い間でしたが、様々な症例に触れることができ大変勉強になりました!きちんと検査をし治療方針を明確にした上で治療をおこなうこと、思ったように治癒しない際にはもう一度鑑別診断を考え直し、アプローチを変えることが大切だと感じました。まずはたくさん経験を積んで、自分の引き出しを多くしたいなと思います(^^)/ 
これから数回は鹿児島での研修中に出会った、「明日分娩予定の牛の食欲がない(黒毛和種)」という症例について考えたいと思います。 
稟告:昨日から急に食べなくなった。寝てばかりでボケーっとしている。 
分娩前の食欲低下の原因としては、{子宮捻転・低Ca血症・過大胎子による消化管圧迫・(ケトーシス・第四胃変位)}などが考えられます。 
ケトーシスや第四胃変位は乳牛では代表的な周産期疾病ですが、肉牛の母牛ではめったに起こらないようです。 
※黒毛和種の第四胃変位:伏見獣医師のNo225~ 
診察すると、「平熱、その他聴診上での異常はないが、皮温が若干冷たい」という状態でした。 
<子宮捻転> 
直腸検査や内診(陰門から手を入れて産道を確認する)、腟鏡検査をおこない、子宮・子宮頚管のねじれを確認することで診断されます。疝痛症状(持続挙尾や腹蹴り)を示すことが多いですが、症状が軽い場合は見た目ではわからない場合もあります。 
発生機序・整復法について:池田獣医師の牛の解剖139~  
<低Ca血症> 
血液検査をおこない、一般に7.5㎎/dl以下の場合に低Ca血症であると判断されます。 
低Ca血症は、分娩に伴う急激な乳中へのCa流出に対して体内のCa貯蔵量が不足することで発生します。加齢、高泌乳、低Mg血症、飼料中のイオンバランスの不整などがリスクとして挙げられます。 
食欲不振、震え・ふらつき、皮温の不整や低下など症状が軽いうちに対応すれば急速に改善します。しかし治療が遅れた場合は、昏睡状態となって死亡する場合もあります。 
過去の低Ca血症症例:戸田獣医師の第104話~  
また、分娩前は、胎子の急激な成長により消化管が圧迫されることで食欲が低下することが考えられます。対策としては、色々与えてみて食べる餌を与える、粗飼料の裁断長を変えてみるなどの工夫をすることになります。食欲低下が軽く分娩直前である場合は分娩を待つのもひとつの方法です。 
戸田獣医師の第103話 笹崎獣医師のお産前の糞チェック 
  
  
  今週の動画「唾液の役割 Function of saliva」 
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