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伏見康生のコラム
NO.225:黒毛和牛の第四胃変位

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2013年3月13日

「黒毛和牛で第四胃変位っておこるの??」

多くの方が、第四胃変位というと乳牛に発生する病気というイメージをお持ちと思います。
ゆえに実際、酪農を知っている方ならこの病名をほとんど(いや100%)知っているはずですが、黒毛和牛にだけ携わっている人には全く聞いたことがない人もいると思います。

冒頭の答えは、「おこる」です。
黒毛和牛にも起こるとなれば、それはどんな病気だ!?危ないのか!?・・・と心配をしてしまうかもしれませんが、そういう病気の発生もごーく稀にあるという程度の話題ですので、さらりと読み流していただければと思います。

第四胃変位とは、本来おなかの真ん中からやや右の下方に存在する第四胃が正常な位置から移動し、ひねりやねじれ、弛緩、圧迫等により食物の移動が滞ってしまう病気です。多くの場合第四胃は左腹に移動してしまいますが、中には右腹側で捻転を起こして死の危機にさらされることもあります。
端折って書きますが、確かに捻転を起こした場合には非常に危険なのですが・・・、第四胃変位はそれ自体が問題というよりは、発生してしまうような牛の全身状態に大きな問題と意味がある病気です。

では、どのような全身状態であった場合に発生するかというと、乳牛では分娩に伴って、急激な泌乳量の増加、血中Ca濃度の低下、DMIの低下、自律神経失調、第四胃アトニー、VFAの第四胃流入、負のエネルギーバランス、体脂肪動員の増加、ケトン体の増加・・・等がおこり第四胃変位に至ります。
このように非常に特殊な多要因病態であることがわかっていますが、おおざっぱに説明すると、「子牛が生まれておっぱいがたくさん出て、カルシウムとエネルギーが足りないけど具合も悪くてあんまり食べられない・・・」という状況になってしまうと第四胃変位が起こります。

つづく!

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