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藤田真千子のコラム
No.4 分娩前の牛の食欲低下②

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2021年10月7日

前回は、分娩前の牛(黒毛和種)の食欲低下の原因として、子宮捻転、低Ca血症、過大子牛による消化管圧迫などが考えられるというお話をしました。
これらを頭に入れながら、診察を進めていきます。

<子宮捻転>
直腸検査および内診で子宮の捻転は確認されず、否定されました。

<低Ca血症>
採血し血液検査を依頼しました。この時点で確定はできませんが、低Ca血症の症状の一つとされる体表温の不整もみられたため低Ca血症を疑い、カルシウム剤ビタミンD3を皮下注射しました。(この時17時を過ぎていたため、検査結果は明後日までお預けです…)

※低Caだと判断できないうちは静脈内ではなく、皮下で投与しています。これは、血中Ca濃度が正常値である場合に静脈注射すると高くなりすぎ、場合によっては致死的な不整脈が起こるためです。起立不能である、起立可能であってもふらついているなど、血中濃度を速やかに回復させたい場合には静脈内への投与が適しています。静脈内に投与する際は時間をかけて投与していきます。

また「被毛粗剛、直腸粘膜の浮腫、瞳孔の収縮時間の延長」という所見もみられました。
→ビタミンA欠乏の可能性も考えられたためビタミンAの投与もおこないました。
ビタミンA欠乏は様々な症状を起こしますが、初期症状として食欲の低下を引き起こすことがあります。ビタミンAは分娩時のストレスにより消耗されるため、投与には予防的な意味もあります。

~第2病日~
少し餌を食べ始めたとのこと。この日もカルシウム剤を皮下注射しました。
~第3病日~
血液検査で低Ca血症(5.5㎎/dl)と、低Mg血症(1.5mg/dl,正常値:1.8~2.3mg/dl)だとわかりました。
→この日はマグネシウム剤を投与しました。
~第4病日~
食欲が完全に回復しました(^o^)。

つづく
 
 
今週の動画「【 How To Bandage 】包帯とその巻き方 その2」

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