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池田哲平のコラム
膀胱炎を考える(1)

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2013年2月15日

 泌尿器の代表的な病気として、前回までは尿石症を紹介してきました。肥育牛でよくある尿石症以外の泌尿器の病気としては、もう一つ膀胱炎があります。
 
 尿石症が雄(去勢)牛に出やすい病気であるのに対して、膀胱炎(バイ菌による細菌性膀胱炎)は雌牛で発生しやすいのです。これは、膀胱から外界(体の外、つまりは外陰部)までの距離によるところが大きいと言われています。

 雄(去勢)牛はおしっこの出口である外陰部がお腹の下にあり、膀胱までの距離が非常に遠いので、外陰部からバイ菌が入って膀胱に感染して膀胱炎になるというのは起こりにくいんです。一方、雌牛の外陰部は尻尾の付け根付近で肛門のすぐ下にあり、膀胱から伸びる尿道はほぼ一直線に外陰部につながっていて、その距離も短いです。なので、外陰部が糞便やぬかるんだ敷き料などで汚れると、そこからバイ菌が膀胱の中に入ってきやすいんです(詳しくは「牛の解剖103」~「牛の解剖105」をご覧ください)。

 膀胱炎の臨床症状は尿石症と似たものがほとんどです。つまり、メインは排尿痛(おしっこの時に痛がる)です。これに加えて、遠くからでもおしっこが濁って見えて、良く見ると膿が混ざっていたり、外陰部や陰毛に膿がくっついていたり、ひどい時には血尿をする場合もあります。感染がひどい時には全身症状として熱も出て、食欲も落ちてしまいます。

 次回からは実際にあった症例を紹介しながら、膀胱炎について考えていきたいと思います。

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