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池田哲平のコラム
膀胱炎を考える(2)

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2013年2月22日

 ある日、農家さんから電話があり、生後3か月のメスの子牛が尻尾をずっと挙げていて、おしっこをする時に痛そうにするということで診に行きました。

膀胱炎を考える(2)

 子牛は稟告の通り、持続的に挙尾の状態であり、背中を曲げて排尿の姿勢を取るものの少ししかおしっこが出ず、時々、地団太を踏むような行動をとっていました。この地団太を踏むような仕草は、俗に言う“お腹を蹴る”動作の一つだと私は考えています。つまり、お腹が痛い時にとる行動の一種ということです。電話をくれた農家さんも、こういった行動を見て“おしっこの時に痛がる”と思ったんですね。

 状況から見て泌尿器系の病気を疑い、外陰部を見てみると、陰毛に結石がついているのが確認でき、またその一部にはわずかながら膿が付いているのがわかりました。こういった所見や行動から、この牛さんは尿石症と膀胱炎を併発しているのだと考えられました。詳しい病気の発生メカニズムは以前コラムで紹介した「尿石症を考える(13)、(14)」の通りで、この牛さんも同じ経緯で症状が現れたのだと考えました。

 この牛さんには、尿路排泄される薬剤の投与(「休題 ―薬剤の体外排泄―」参照)と合わせて塩化アンモニウムを主剤とする尿石症の治療薬の経口投与を行ったところ、一週間ほどで治癒に至りました。

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