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池田哲平のコラム
膀胱炎を考える(3)

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2013年3月1日

 この様な単純な感染性膀胱炎であれば、抗生物質の全身投与だけで治る事も珍しくありません。しかし、中にはなかなか厄介なヤツもあります。

 ある雌の肥育牛が、導入直後から頻繁に尻尾をあげ、排尿時に痛みを伴う様子を見せており、排尿は少量を何回にも分けて行っていました。外陰部の一部には膿の付着があり、直腸検査では、通常とは違う硬く弾力を失った膀胱を触知しました。膀胱炎と診断し、抗生剤と消炎剤の全身投与を数日行いましたが、なかなか良くなりません。尿道からカテーテルを挿入し、膀胱洗浄なども行いましたが、完治には至りません。食欲が安定しているうちは良いのですが、排尿痛がひどく食欲が大きく低下する様な状態が不定期に繰り返されました。その度に、抗生剤と消炎剤の全身投与を数日行い、状態が良くなってきたら経過観察、という状態が1年近く続きました。

 最終的には治療への反応も悪くなり、排尿痛の緩和や食欲の回復が見込めなくなったところで出荷となりました。

 屠場で検査所の先生と中の状態を確認したところ、膀胱内に手拳大の腫瘤が出来ており、切開したところ、中には膿が充満していました。

膀胱炎を考える(3)_01

膀胱炎を考える(3)_02

 ここまで肉芽腫の増殖を伴う化膿性膀胱炎の場合は、内科的な治療のみによる根治は困難と思われます。大きな肥育牛では外科的な摘出も難しいですが、早期の発見・診断によって病巣が小さいうちに何とか出来ないだろうか、特に、より侵襲性が低くなるように開腹せずに経尿道的にどうにか出来ないか、と考えております。

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