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池田哲平のコラム
膀胱炎を考える(4)

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2013年3月8日

 雌に多いといわれる膀胱炎ですが、もちろん中には去勢牛での発症もあります。去勢牛の膀胱炎の場合は尿石症と併発しているケースも多く、それが膀胱炎に起因する尿石症なのか(「尿石症を考える(14)」)、尿石症に起因する膀胱炎なのか(「尿石症を考える(24)」)は判断が難しいところです。

 そんな中、尿石症を伴わずに膀胱炎のみを発症したケースもありました。

 ある肥育農家さんで、牛が餌を食べないという事で診療に行きました。
 治療対象の牛さんは生後18ヶ月の黒毛和牛の去勢で、繁殖農家さんで尿石症による尿閉を起こしたため、尿道バイパス手術が施された状態で肥育農家さんにやってきていました。肥育農家さんに来て半年以上、食はやや細いが大きな問題なく順調に肥育されている牛さんでした。主な症状は食欲廃絶と発熱(40.4℃)で、胃動低下以外に聴診上の問題はありませんでした。泌尿器の既往歴(尿石症)があったので直腸検査による膀胱の触診を行ったところ、膀胱内には生理的範囲よりも少し多い量の尿が溜まっており、膀胱壁がやや分厚くなっているのが感じられました(エコーが無かったために、客観的な評価は出来ませんでしたが・・・)。
 この時点で膀胱炎がかなり強く疑われたので、採尿して尿検査してみる事に。
 バイパスされた尿道からカテーテルを挿入して、膀胱内の尿を採って見てみると、尿は異常に混濁していて、膀胱の粘膜から脱落した上皮と思われるものや膿が肉眼で見て取れました。尿を指先に少量落として触って確かめても、尿結石を含んでいるようなザラザラした感覚は一切ありませんでした。試験紙による検査では潜血(目では見えないごく微量の出血)反応も出ました(これは膀胱炎による粘膜出血によるものと思われますが、カテーテル挿入時の粘膜損傷で出血した可能性も考えられます)。

膀胱炎を考える(4)

(つづく)

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