2013年3月15日 以上のような所見から、膀胱炎と診断して治療を行いました。「休題 ―薬剤の体外排泄―」で挙げたように、尿路排泄される抗生物質を使用し、最初の3日間はステロイド系抗炎症剤も併用しました。抗生物質を3~4日間で変えながら10日間治療を行い、最終的には尿の混濁や排尿時の疼痛などは無くなり、治癒に至りました。 今回の症例のように、去勢牛で膀胱炎が単独で発生するのは珍しいと思います。この牛さんのようにバイパス手術を受けている牛さんの場合、手術後、結石による尿閉は問題なくなって排尿は非常に良くても、バイパス孔から下のモモの部分にかけて、結石が結晶化して白く扇状に付着する事も多いのですが、この牛さんではそのような状態も見られませんでした。 膀胱炎を発症した原因に関しては、はっきりした結論は出ませんでしたが、バイパス手術によって通常の去勢牛よりも尿道が短くかつ汚染しやすくなったために、外部からの感染が起きた可能性が一番考えられました。単純な感染であれば、膀胱~尿道の粘膜における自然免疫で対応できるはずですが、免疫力を落とす要因(増飼によってルーメンへの負荷が増したことによるストレス、ビタミンAコントロールによる血中ビタミンA濃度低下、など)が重なった事によって発症したのだと思います。 前の記事 膀胱炎を考える(4) | 次の記事 膀胱炎を考える(まとめ) |