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池田哲平のコラム
牛の解剖105:尿道(3)

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2012年6月22日

 雌の尿道の出口(外尿道口)は外陰部からすぐのところにあり、直接目で見ることもできるので、膀胱カテーテルを挿入する際の最初のアプローチは雄牛に比べて非常に簡単に出来ます。

 しかし、いざカテーテルを尿道に挿入しようとなると、そこにはちょっとしたトラップがあるので注意が必要です。

 それは“尿道下憩室(にょうどうかけいしつ)”というものの存在です。読んで字のごとく、「尿道の下にある憩室」というものですが、憩室とは「小さな袋状の小部屋」を意味します。
 
 肉眼で見える外尿道口は当然尿道につながっているのですが、その直下に袋状の尿道下憩室が存在しているため、外尿道口からカテーテルを挿入した時に下に行きすぎると、この尿道下憩室にはまってしまって進めなくなります。

 膀胱カテーテルの挿入は、一見すると外尿道口から管を一本通すだけの簡単な操作に見えますが、雌牛で膀胱カテーテルを挿入するときは、この「外尿道口―尿道―尿道下憩室」の解剖学的位置関係をしっかりイメージしておかないと、にっちもさっちもいかなくなる時があります。

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