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池田哲平のコラム
牛の解剖104:尿道(2)

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2012年6月15日

 雌の尿道は雄のように複雑に曲がる事もなくほぼ直線的に膣まで伸びて、膣の腹側に開口します。膣の入り口(出口?)つまり外陰部からは数㎝しか離れていないので、比較的簡単に確認できます。これは雄牛との大きな違いですね(雄牛の尿道の出口は陰茎の先端なので、基本的には包皮に包まれていて見えません)。

 つまり、雌では尿道の出口が外界と近いために、尿道が汚染する可能性が雄よりもぐっと高くなります。外陰部は肛門の下にありますので、糞便で汚れた外陰部から何らかの原因で汚染物が膣内に入り、尿道出口付近を汚染してしまう事もあります。また、雌の尿道は雄に比べて非常に短いので、尿道の出口に感染が起きると尿道を伝って膀胱まで達する(上行性の膀胱炎になる)リスクが雄よりも断然高いです。

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 膀胱炎になってしまうと、膀胱から膿や血が混じった尿が出たり、排尿を少量・頻回で行ったり、重症例ですと膀胱麻痺を起して膀胱がおしっこを出せなくなってしまったりもします。こういった時は膀胱にカテーテルを通して排尿したり膀胱内を洗浄したりすることもあるのですが、ここで一つ厄介な事があるんです。。。

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