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加地永理奈のコラム
貧血にプリモボラン②

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2024年6月26日

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前回の続きです。
血液検査結果から重度の貧血と診断した子牛に、プリモボランを投与しました。

プリモボランとは、蛋白同化ステロイド剤という医薬品です。タンパク質を合成して身につける作用があり、筋肉や靭帯の増強効果があります。
プリモボランを使った治療は過去のコラムでもいくつか紹介されています。
・「先天異常の処置 その2
・「ナックリングと骨軟症の見分け方
・「これ、本気で治ると思う?
・「No.17 タンパク同化ホルモン剤使ってみました①~④

また、プリモボランには造血機能を高めて赤血球を増やす作用もあることが認められています。そのため、ヒト医療では再生不良性貧血の治療にも用いられています。今回はこちらの効果を期待してプリモボランを投与しました。
そして赤血球の材料となるタンパク質が不足しないように、ミルクに卵を添加してタンパク摂取量を増やしてもらいました。

プリモボラン投与から6日後の血液検査結果が以下の通りです。
 赤血球数 489万/μL  (前回595万/μL)
 ヘマトクリット 22.4 % (前回18.6 %)
 ヘモグロビン 8.3 g/dL (前回6.8 g/dL)

赤血球数が前回の値より少し下がっていますが、血液中の赤血球の割合であるヘマトクリット値は20%を超えて回復し、ヘモグロビン値も基準値の10 g/dLに近づいてきました。
他の腎臓の値は基準値内まで下がり、細菌感染と闘う白血球数も下がっていることが確認できました。
下痢による消耗もあったため、まだ改善途中といった具合でしたが、投与から1週間で効果を確認できました。
下痢も止まって、今後は卵添加の継続で回復を見込んでいます。

 
 
今週の動画
尿路結石

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