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松本大策のコラム
これ、本気で治ると思う?

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2022年11月14日

 みなさんこんにちは。栃木の方はもうかなり寒さを感じるようになってきました。コロナの第8波いやですねぇ。来ないでほしいな。

 ところで今回はまず写真を見てみてください。

 生まれて2日目の写真なのですが、ひどい関節の変形でしょ?これ、治してくれって?力も入らないみたいだし、本気で言ってるの?というところが普通の返しだと思うのですが、実はシェパードではこのような重度の関節変形を何度も治している実績があります。この手の変形は、けっこう各地で見かけます。お母さんのお腹の中のことですから、原因ははっきりしませんが、アカバネなどの異常産ウイルスの感染でもこのような関節湾曲はでます。
 大抵はあきらめられているように思うので、大切な命であり資源である子牛を1頭でも助けられたら、という想いで今回のコラムを書いています。シェパードは秘伝もすべて公開!というのが流儀ですので、治療の内容もきちんとここに書いておきます。

 まず治療の方針ですが、子牛自身の各部位の正しい成長を促す、というのがコンセプトです。体型異常というのは、骨格の形が異常であることで、その原因としては骨自体もさることながら、骨を引っ張る筋肉や腱、骨を繋ぐ靱帯の各部位での引っ張り具合(緊張)が正常とは異なる、ということです。
 骨格の基本構造となるタンパク質とカルシウムの代謝を整えること、靱帯や腱、筋肉が正しい緊張で正しい長さに発達すること、を達成すれば、骨格の異常は自然に治っていく、というのが僕の考え方です。

 そこで、まずみなさんご存じのV4処置を実施します。軽度の変形ならこれだけでも十分に治ってくれます。ナックリングなどもそうです。
 それから、骨格のカルシウム代謝を整える「カルシトニン」というホルモンを使います。これは人体薬ですが、牛さんも元々持っているホルモンです。それからタンパク同化ステロイド(プリモボラン)というホルモン剤も使います。これも動物本来が持っているホルモンなのですが、食べ物から消化吸収したタンパク質を身につける働きがあります。打つ量は、子牛に1回どちらも人間と同じ量(1アンプルずつ)を週に1回の割合で1~3回(大抵は1、2回で治まります)皮下注射します。

 驚くなかれ、たったの処置後2週間ほどで骨格異常が治ってくれるのです。論より証拠、ビデオをご覧下さい。

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