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松本大策のコラム
鼻血のお話

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2022年10月31日

 みなさんもご経験があると思うのですが、牛さんも時々鼻血を出します。まあ、僕と違う点は、エッチな漫画では鼻血は出さないことくらいでしょうか。

 牛さんの鼻血のとき、いくつかチェックすることがあります。まず、「出血が片方からか、両方の鼻の穴からか?」。片側だけの場合、その出血部位はその鼻の穴か副鼻腔(左右独立しています)だと判断します。角がある牛さんの場合は、その角をぶつけて角鞘(角のさや)の中で角が折れていないか?ということも考えます。角が折れて内出血すると、その血液は片側の副鼻腔を通じて鼻血として出てきます。
 また鼻梁(眼と鼻の穴の間。って説明で解るかなぁ?)を強打した場合もそちら側の鼻の穴から出血することがあります。これらの場合は、角や鼻梁を氷で冷やしてあげると止まることが多いです。
 その他、片側の時も両側の時もあるのですが、人間と同じ原因での鼻血もあります。これは、空気が乾燥した場合に鼻の粘膜が弱くなり、ここの細い血管が破れて起こる出血です。これは片側が多いのですが、同じ牛さんなので粘膜の強さも両側で同じため、両側性に鼻血が発生することもあります。この場合、牛さん用の止血剤はさほど効果がないので、僕はビタミンAの注射などをすることが多いです。

 まれにではありますが、鼻の穴の中に良性の腫瘍ができている場合もあります。

 良性にせよ悪性にせよ腫瘍は急激に発育するため「栄養血管」がたくさん発達していますし、この血管は脆弱で破れやすいため出血しやすいのです。僕が牛さんでよく経験するのは、バイ菌などが感染して炎症性肉芽というものができて、それが出血しているケースです。この場合、出荷規制を気にしなくてよい時や、妊娠していない場合は、ビタミンAの皮下注射をしたのち、ペニシリン10ml+デキサメサゾン5mlを数日皮下注射することで完治することが多いです。
 面倒なのは、出荷規制を気にしなければならない場合や妊娠している場合(妊娠牛にデキサメサゾンを投与すると流産することが多いのです)の処置です。この場合は、ペニシリン1ml+デキサメタゾン1mlを生理食塩水50~100mlで薄めて鼻の穴の中を洗浄してあげます。これも10日間ほどは続ける必要がありますし、この場合もビタミンAを投与しておいた方が早く改善します。

 気をつけておかないといけないのは、最近増えている「牛白血病(牛伝染性リンパ腫)」の場合も出血傾向が現れるので、繰り返す場合や止まりにくい場合は検査をしてもらいましょう。
 
 
 
 
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