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加地永理奈のコラム
貧血にプリモボラン①

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2024年6月19日

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診察中の1か月齢子牛の血液検査をしたところ、目を引くほどの貧血の値になっていました。
 赤血球数 595万/μL
 ヘマトクリット 18.6 %
 ヘモグロビン 6.8 g/dL

赤血球数は、1か月齢の子牛では800~900万/μLくらいの値が基準値です。
ヘマトクリット値は、血液中の赤血球の割合で、30~40%くらいが基準値です。20%を下回るのは重度の貧血と言えます。
ヘモグロビン値は、酸素を運んでくれる赤血球中の色素の濃度です。10g/dLくらいが基準値なので、6.8は低いです。
どの数値を見ても貧血を示す値でした。

この子牛は真っ赤な血便をしていて、抗生物質や抗炎症剤、補液の治療をしました。出血性大腸菌の感染を疑う症状です。それでもぐったりしていたので、免疫力改善と止血のための血小板補充を目的に、輸血も行いました。

そして治療開始から1週間後の血液検査結果が上記の内容です。
他にも白血球数が高く、まだ細菌感染と闘っている状態であること、腎臓の数値が悪く、おそらく大腸菌の毒素から腎臓にダメージが出ていることもわかりました。
腎臓が悪いと、赤血球を作るために必要な物質(エリスロポエチン)が作られず、貧血の原因となってしまいます。

これらの結果から組み立てた治療方針は、
①抗生物質と抗炎症剤の投与を続けること
②補液により循環血液量を上げ、毒素を薄めて、腎臓へのダメージを減らすこと
プリモボランを投与してタンパク同化率をあげること
④タンパクとエネルギー不足の解消のために、ミルクにを添加すること
です。

貧血にプリモボランのわけは次回に続けます。
 
 
今週の動画
OPU機材で卵胞嚢腫を吸引

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