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加地永理奈のコラム
去勢で局所麻酔

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2023年6月21日

シェパード栃木では、麻酔下で陰嚢を切開して精巣を露出し、糸で結んで止血して切るという観血去勢を行っています。ウシを寝かせて行うので暴れにくい、餌食いが落ちにくい、止血部位や取った精巣を農家さんと一緒に確認できる、といった点から、この方法を続けています。
せっかく獣医師に去勢を任せていただけるということで、去勢前にキシラジンで軽く麻酔をかけ、先取り鎮痛で疼痛ストレスを軽減するようにしています。
ただどうしてもウシが痛がってしまうポイントが3つあります。
① メスで陰嚢を切るとき
② 鞘膜を精索上部まで剝き上げるとき
③ 精索を糸できつく結んで止血するとき
このとき麻酔下でもウシが痛がって動きやすいので、この3点は必ず声をかけて、一緒に保定していただいている農家さんに注意喚起をします。
それでも興奮やすい子、去勢しそびれで月齢が過ぎている子に暴れられると怖い…ということで、陰嚢に局所麻酔を追加してやってみました!

ウシを倒した後、最初は、痛がるポイント①の陰嚢先端(青矢印)にリドカインを1mLずつ皮下注射してやってみました。これでポイント①の切皮で全く暴れなくなったのですが、②③はやはり痛がって動く反応でした。
次から、陰嚢根元(赤矢印)にもリドカイン皮下注射を追加したところ、ポイント①②で全く暴れなくなりました。③は痛がったり痛がらなかったりという感じですが、それでもここまでウシが動かず安全にできたことに農家さんも安心したご様子でした。
キシラジンによる全身麻酔は去勢のときスタンダードで行っていますが、ガタイが良い子での去勢では、この局所麻酔を追加することを続けてみようと思います。

 
 
 
 
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【聴診】聴診の様子

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