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データを分析して現状を正しく知る(出雲畜産技術士のコラム第6弾-15)

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2022年7月2日

15 国内における和牛肉の消費動向

 2017年度に日本政策金融公庫が、全国の20歳代から70歳代の男女2,000人を対象に牛肉の消費動向に関するアンケート調査を実施しました。その結果を踏まえて、和牛肉に対する消費者の考えについて考察しました。結論から言えば、「和牛肉は美味しくて食べたいが、高価だから頻繁に食べることはできない」と言う消費者の考えが見えてきます。

 図から、和牛肉の美味しさを85%の人が認めており、柔らかさについても交雑牛肉や国産牛肉よりも群を抜いて優位であることが分かります。和牛肉は、交雑牛肉を含めた国産牛肉や輸入牛肉に比べると価格が高いということで、お祝い事などの限られた場面での利用にとどまっている様子が伺えます。輸入牛肉を美味しいと感じている人は44%で、価格の安さで選んでいる人が多いようです。祝い事などの特別な時には、せっかくだから美味しい和牛肉を食べたいという嗜好が見て取れます。


  図 牛肉に対するイメージ(拡大

 このように和牛肉の購入意欲は強く、価格が高いので頻繁には購入出来ないが、美味しいので出来ればもっと食べたい肉として認知されています。また輸入牛肉に対しては、19.1%が減らしたいと答えており、安心安全な国内産牛肉に対する信頼感が伺えます。

 「赤身肉と霜降り肉の購入頻度」についても別途調査結果があり、この結果からは、赤身肉を購入することが多いが霜降り肉を購入することもある人が、5年前は40.1%だったのが現在は44.5%に増加しており、美味しい霜降り肉を出来れば購入したい人がわずかだが増えています。普段は赤身肉を食べるが、高いお金を出しても美味しい和牛肉をたまに食べたいと考える人の多いことが分かります。

 年間の和牛と畜頭数は約500千頭です。国内の総人口を1億2千万人とすると、国民一人の年間和牛肉消費量は、推計値で1.2kgとなります。国内の牛肉消費量は一人当たり5.8㎏(農業白書より)ですから、牛肉消費量に占める和牛肉の割合は20%となります。和牛肉の供給量から考えると、最大で1.2kgしか食べられないのが実情です。

 世界的にも和牛肉は素晴らしく美味しい食材として認知されています。飼養頭数と消費量の関係から言っても、多少の相場の変動はあっても、需要が大きく落ち込み和牛生産が立ち行かなくなることは考えづらいと、筆者は考えています。美味しくて、食べたいと誰もが思う和牛肉は、日本が誇る食材です。美味しいお肉は、食べた人を幸せにします。たまに食べる和牛肉で幸せが得られれば、少々高くても買ってくれる消費者の存在を信じて和牛肉生産に邁進しましょう。

 統計数値などを使って、和牛生産の現状について15回にわたり考察しました。飼料価格を含めた資材費の上昇など不安要素はありますが、世界が認める和牛肉を生産し、消費者に届けていることを誇りに持ちながら、食べた人を幸せにできる和牛肉づくりに今後とも取り組んで頂きたいと思います。

(完)

出雲畜産技術士事務所 代表 出雲将之
 
 
~ 出雲畜産技術士のコラムシリーズ ~

第1弾「幸せな牛飼いとなるための10カ条-1

第2弾「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス-1

第3弾「牛さんの気持ちになって考える

第4弾「牛さんとわたし

第5弾「和牛への支援と将来展望
 
 
 
 
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