(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
ゲストのコラム
データを分析して現状を正しく知る(出雲畜産技術士のコラム第6弾-11)

コラム一覧に戻る

2022年5月28日

11 和牛肥育牛(去勢)の枝肉格付け割合の推移

 図は1999年から2021年までの、和牛肥育牛(去勢)の枝肉格付け割合の推移を表しています。A3格付け割合が減り、A5格付け割合が増加していることが分かります。A5割合が1999年に15.7%だったのが、2021年には54.7%となり和牛枝肉の半分以上がA5格付けとなっています。

 枝肉格付けは歩留まり等級A,B,Cと、肉質等級5,4,3,2,1で区分され、肉が効率的に取れるかと、見た目の良さを総合的に順位付けしています。歩留まり基準値72以上がA等級にランクされ、黒毛和牛去勢牛の場合96.8%がA等級に格付けされています(日本食肉格付け協会調べ 2021年成績)。肉質等級はBMSNo、肉の色沢、肉の締まり及びきめ、脂肪の色沢と質などで決められます。中でも、BMSNoは8~12が5等級、5~7が4等級、3~4が3等級、2が2等級、1が1等級と決められており、BMSNoが良いものほど、肉の締まり及びきめや脂肪の色沢などが良い傾向にあります。従って、BMSNoでほぼ肉質等級が決まると言えます。


拡大

 私は大阪出身なので、肉と言えば牛肉でした。お肉屋さんのショーケースには特選、上肉、並肉などの区分がしてあり、特選はめったに食べることが出来ませんでした。家にお客さんが来た時のおもてなしで出すくらいで、年に1回あったでしょうか。今では、A5等級のいわゆる特選牛肉が、黒毛和牛では半分以上を占めるようになり、家庭で普通に口にすることが出来るようになりました。

 細かい脂肪交雑の入った、いわゆる霜降り牛肉は見た目も綺麗です。脂肪交雑の多い枝肉の単価が高いことから、とにかくBMSNoが良い肉牛となる改良が進められ、農家においてもBMSNoを重視した種雄牛の交配が進められました。改良の進展により、ロース芯の脂肪と赤身の割合が5:5以上の枝肉を、よく目にするようになりました。しかし、脂肪が多ければ多いほど本当に美味しいのか、疑問が呈されるようになりました。

 2017年の宮城全共から、肉牛の部の審査基準が「BMSNo 10以上は同等と見てそれに美味しさの指標を加え、なおかつ歩留りが良く効率の良い枝肉を上位にする」という方針のもとで審査されるようになりました。2022年の鹿児島県全共の審査基準でも「肉量、肉質、脂肪の質に対し、それぞれを1:1:1の重みで序列化を図る」となっており、美味しさが重要視される時代となりました。
(つづく)

出雲畜産技術士事務所 代表 出雲将之
 
 
~ 出雲畜産技術士のコラムシリーズ ~

第1弾「幸せな牛飼いとなるための10カ条-1

第2弾「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス-1

第3弾「牛さんの気持ちになって考える

第4弾「牛さんとわたし

第5弾「和牛への支援と将来展望
 
 
 
今週の動画
Bovine Papillomatosis 3 牛乳頭腫症3

|