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データを分析して現状を正しく知る(出雲畜産技術士のコラム第6弾-9)

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2022年5月14日

9 和牛枝肉格付けA5とA4、A3の枝肉単価差の推移

 筆者は和牛肥育グループの技術支援をしてきましたので、東京食肉市場で枝肉検分と競りの様子を見て来ました。最近の傾向として、枝肉格付けによる価格差が少なくなってきていると感じています。A4格付けのほうがA5より高い単価を取ることもあります。それらの要因について考察してみました。

 図を見てわかる通り、2000年頃まではA5格付け(平均2,500円/kg)はA3(平均1,550円/kg)の1.6倍(2,500円÷1,550円≒1.6)の枝肉単価(税込み)でした。ところが、2010年以降1.3倍程度(2,600円÷2,000円≒1.3)の価格差で推移しています。A3格付けの枝肉単価が2,000円/kgを超えることが珍しくなくなり、枝肉重量さえあればA3でも120万円/頭で販売することが可能となりました。逆にA5格付けでも2,400円/kgで枝肉重量が500㎏/頭なら、A3と同じ120万円/頭となってしまいます。


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 A5格付けとA4を同様に見ると、2000年頃までは1.3倍(2,500÷1,900円≒1.3)程度でしたが、2010年以降1.15倍程度(2,600円÷2,250円≒1.15)の価格差で推移しています。A5格付けの枝肉単価上昇に比べて、A4、A3格付けの単価上昇が大きいため、このような現象が生じたのです。2021年にはA5格付け割合が54.7%となりました。上場する枝肉の半分以上がA5格付けとなり、昔ほどA5格付けの希少価値が無くなりつつあると言えます。

 だからと言って、A5格付けを目指さなくても良いわけではありません。しかし脂肪交雑を高めるために、無理にビタミンコントロールをするよりも、増体を良くすることを意識した飼養管理に努めることが賢明だと考えます。増体を良くしながら、結果として脂肪交雑が高くなるような気持ちで飼養管理することです。黒毛和種の遺伝的能力が高まり、普通の肥育牛でも脂肪交雑は入る時代になりました。これからは脂肪の量よりも、オレイン酸を高めるなど質にこだわった飼養管理と、カブリや広背筋が厚く、皮下脂肪が薄い、歩留まりの良い枝肉となるような肥育牛を育てることが重要です。
(つづく)

出雲畜産技術士事務所 代表 出雲将之
 
 
~ 出雲畜産技術士のコラムシリーズ ~

第1弾「幸せな牛飼いとなるための10カ条-1

第2弾「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス-1

第3弾「牛さんの気持ちになって考える

第4弾「牛さんとわたし

第5弾「和牛への支援と将来展望
 
 
 
 
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