2022年5月7日 8 和牛肉小売価格の推移 独立行政法人 農畜産業振興機構のHPには、畜産物需給関係の統計データが掲載されています。全国の和牛肉小売価格(サーロイン、モモ、バラ肉)を1999年から2022年2月までの期間について図に示しました。図を見ながら考察を加えたいと思います。 1991年の100g当り小売価格は、サーロインが1,172円、モモ598円、バラ422円でした。サーロインはもも肉の2倍、バラ肉の2.8倍の価格で販売されており、サーロインの価値が高い時代でした。2022年2月時点では、サーロインが1,299円、モモ779円、バラ759円となり、サーロインはもも肉の1.7倍、バラ肉の1.7倍の価格となり、焼き肉需要に押され、もも肉やバラ肉の価値があがりました。 1991年と2022年2月の同部位における小売価格は、サーロインは1.1倍、モモ1.3倍、バラ肉1.8倍とやはり焼き肉関係の部位が、価格を大きく上げています。実需者はモモやバラが充実した枝肉に高い価値をつけて購買する、今の傾向を反映していると言えます。 図を見てわかる通り、2014年を潮目にして小売価格が上がり始めました。2018年には2005年に比べて1.2倍程度に値上がりしました。和牛枝肉単価の最高値は2016年に記録し、2005年枝肉単価の1.2倍程度となりました。枝肉単価と小売価格の上昇率は、同じ1.2倍となり小売価格が枝肉単価に連動していることが分かります。美味しい和牛肉を食べるためには、小売価格が値上がりしても買おうという消費者が多いと考えます。 筆者は月に1回は和牛肉の日と決めていて、ミスジ、イチボ、芯タマ、肩バラ肉を購入し焼き肉をしています。これら部位の価格は、筆者が購入するお肉屋さんでは800円/100g程度なので、1万円出せば1kg以上購入でき、娘家族たちと満足できるだけ食べることが出来ます。筆者の見た目では今のもも肉はBMSNo8以上は入っていて、いつも孫たちからは美味しいと喜ばれています。 和牛肉の小売価格は今後どう変化するのでしょうか。一度値上がりした食品が値下がりすることは考えにくいです。そして、飼料費を含めて肥育経費は大きく上昇しており、肥育にかかる生産費を考えると、枝肉価格が下がると肥育生産者の経営が立ちいかなくなります。フェアトレードの意味からも、美味しい和牛肉を消費者が適正価格で買い支えるという意識も大事だと考えます。 出雲畜産技術士事務所 代表 出雲将之 第1弾「幸せな牛飼いとなるための10カ条-1」 第2弾「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス-1」 第3弾「牛さんの気持ちになって考える」 第4弾「牛さんとわたし」 第5弾「和牛への支援と将来展望」 |