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データを分析して現状を正しく知る(出雲畜産技術士のコラム第6弾-7)

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2022年4月30日

7 和牛枝肉格付け成績の推移

 日本食肉格付協会のHPには、黒毛和種、乳用種、交雑種の年ごと格付け成績が掲載されています。黒毛和種肥育牛(去勢牛)の成績を1999年から2021年の期間について図に示しました。図を見ながら考察を加えたいと思います。

 A5割合を棒グラフで、枝肉重量を折れ線グラフで表しました。A5割合は1999年に15.7%に過ぎませんでしたが、2021年には54.7%と飛躍的に向上しました。A4以上割合では43.6%が87.5%となり、いわゆる和牛枝肉の上物割合が9割となる時代となりました。枝肉重量は2004年から2008年にかけて大きく上昇し、A5割合は2013年から2021年まで、着実に向上してきました。


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 1999年から2021年までを各項目別に見ると、枝肉重量は435㎏から512㎏に、ロース芯面積は51.5c㎡から67.0 c㎡、バラの厚さは7.3 cmから8.3cm、BMSNoは5.2から8.0となり、質量ともに大きく成績を伸ばしています。

 格付けは2004年にA4以上率が50%を超えてから、年を追うごとにこの割合が高まり、2017年には約80%と肉質が飛躍的に向上しました。これらの要因は、優秀な種雄牛による改良の効果と、科学的知見に基づく飼養管理技術の実践により達成できたと考えられます。

 枝肉重量の上昇は、平茂勝を始めとする優秀な種雄牛による和牛大型化への改良効果が、枝肉重量増加となったと考えられます。平茂勝は1990年7月生まれで、1998年頃から本格的に供用され、それ以降その肥育牛が出荷されました。平茂勝の後継牛である勝忠平や百合茂などその後継牛たちも枝肉重量の育種価が高く、これらの活躍と2004年から2008年の枝肉重量が大きく伸びる時期とが合致することから、これら種雄牛による改良の結果であると考えられます。また家畜改良事業団では、現場後代検定による種雄牛の選抜が2010年頃から本格的に始まり、より信頼度の高い種雄牛成績が出だしたことも、改良スピードを速めた要因と考えられます。

 図から2012年以降のA5率上昇が顕著であることが分かります。これに関しては、安福久の存在が大きいと言えます。母方が安福久である枝肉が2012年頃から出荷されだしました。その頃の「肉用牛枝肉情報全国データベース」を見ると、母方に安福久が入った血統で、それに気高系や藤良系を交配した肥育牛の枝肉成績は、質量ともに優れた結果を残してい、ます。2011年にA4:A5の出荷割合が2:1でしたが、2021年の枝肉成績の割合は、A4:A5=1:1.7となり、BMSNo8以上が6割近く生産されようになりました。

(つづく)

出雲畜産技術士事務所 代表 出雲将之
 
 
~ 出雲畜産技術士のコラムシリーズ ~

第1弾「幸せな牛飼いとなるための10カ条-1

第2弾「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス-1

第3弾「牛さんの気持ちになって考える

第4弾「牛さんとわたし

第5弾「和牛への支援と将来展望
 
 

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