(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
ゲストのコラム
データを分析して現状を正しく知る(出雲畜産技術士のコラム第6弾-6)

コラム一覧に戻る

2022年4月23日

6 和牛枝肉単価の変遷

 農畜産業振興機構のHPにある、牛枝肉規格別卸売価格統計データを1990年から2022年の直近に至るまでをグラフにしました。和牛枝肉格付け別単価の推移に着目して、考察を加えたいと思います。

 図の通り、牛枝肉規格別卸売価格は上がり下がりを繰り返して来ました。価格は需要と供給の関係で決まることから、肥育牛出荷頭数が少なくなると和牛肉の供給不足から、枝肉単価が上昇し、供給が過剰になると低下します。牛肉トレーサビリティー法が施工された2003年以降で見ると、と畜頭数が減少したのは2005年から2007年にかけてと2015年から2018年にかけてで、この時期の枝肉単価が上昇したことは図から分かります。


拡大

 需要の側から見ると、牛肉自由化や食品の安全を脅かす事態が生じた時に、消費者心理の落ち込みにより和牛肉需要の減退が生じ、価格が大きく低下します。和牛枝肉単価は1991年の牛肉輸入自由化や2001年のBSE発生、2011年の東日本大震災による放射能汚染疑いなどでも、単価の低落を助長して来ました。偶然ですが10年周期の低下が見られます。そして2020年1月の新型コロナウイルスですから、2011年の震災からこれも約10年経過しています。この周期で行くと、2031年頃に次の価格低落が来ることになります。

 価格サイクルがあるとしたら、その中間年の2025年には次の枝肉単価上昇のピークが来ることになります。2025年は大阪で関西万博が開催され、それまでにコロナの終息やインバウンド需要の回復が見込まれます。しかし2015年以降、出生頭数が増加傾向にあることから、和牛と畜頭数が増加することで供給が増えれば枝肉単価がどうなるかは見通しにくいとも考えられます。輸出やインバウンド需要が、どこまで貢献できるかにかかっていると考えます。

 2016年は和牛枝肉単価が過去最高値を記録しましたが、この年の和牛と畜頭数は去勢とメスの合計で439千頭で、過去30年間で最低のと畜頭数でした。和牛枝肉単価の決定要因は、やはり供給量によるものが大きいのかも分かりません。

(つづく)

出雲畜産技術士事務所 代表 出雲将之
 
 
~ 出雲畜産技術士のコラムシリーズ ~

第1弾「幸せな牛飼いとなるための10カ条-1

第2弾「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス-1

第3弾「牛さんの気持ちになって考える

第4弾「牛さんとわたし

第5弾「和牛への支援と将来展望
 
 

|