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データを分析して現状を正しく知る(出雲畜産技術士のコラム第6弾-4)

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2022年4月9日

4 出生頭数の増減と価格への影響

 牛個体識別全国データベースに蓄積されたデータから、家畜改良センターが集計作業を行い、出生頭数をHPで公表しています。そのデータを使って2004年から2020年までの推移を、オス、メス別に図に表してみました。出生頭数ですから、ホルスタインを借り腹にして、和牛の受精卵移植により生まれた和牛子牛も含まれます。

 出生頭数は2014年を底にして以降、オス、メス合わせて毎年約1万頭が増加し続け、2014年487千頭から2020年549千頭となり6年間で62千頭増えました。出生頭数が増加し、家畜市場へ上場される子牛が増えると需要と供給の関係で、子牛価格は低下傾向を示します。枝肉相場が高く肥育生産者が強気に競ることが出来る状況なら、子牛価格の下がり方は緩やかとなります。

 しかし枝肉相場は2016年をピークにして、2020年にかけて低下傾向にありました。加えて子牛の上場頭数が多いので、肥育生産者は競りボタンの押し方を控えがちになりました。こうなると残念ながら、子牛価格は下がります。この時に政府がコロナ対策として「国産農林水産物等販売促進緊急対策」令和2年度補正予算額 140,037百万円や、「和牛肉保管在庫支援緊急対策」令和2年度ALIC事業 49,986百万円を打ち出したことにより、枝肉相場の急激な下落は一時的に抑えられました。

 出生頭数の多い都道府県は、2020年の上位10道県は、鹿児島県96千頭、北海道82千頭、宮崎県72千頭、熊本県32千頭、沖縄県32千頭、岩手県27千頭、長崎県25千頭、宮城県21千頭、大分県14千頭、栃木県14千頭の順となっています。これら10位までの出生頭数で全国の76%を占めています。北海道や熊本県はホルスタインを借り腹にした和牛子牛生産が盛んですから、繁殖頭数の割に出生頭数が多くなります。酪農家による和牛子牛生産が盛んなこれら地域では、生後50日齢前後で出荷する子牛市場があるなど、地域の実情に応じた子牛の流通体制が構築されています。

 OPU(経膣採卵技術)などによる受精卵移植が一般化しつつある現在では、和牛繁殖頭数だけでは和牛の子牛生産頭数の多い少ないを判断しづらくなっています。

(つづく)

出雲畜産技術士事務所 代表 出雲将之
 
 
~ 出雲畜産技術士のコラムシリーズ ~

第1弾「幸せな牛飼いとなるための10カ条-1

第2弾「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス-1

第3弾「牛さんの気持ちになって考える

第4弾「牛さんとわたし

第5弾「和牛への支援と将来展望
 
 

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