2022年4月2日 3 道府県の飼養頭数 前回、家畜改良センターの個体識別番号で得られたデータが有益であることをお話ししました。今回は、オスとメスの頭数から見る道府県の肉牛事情について考察を加えたいと思います。 表は、国内の主な和牛生産地のオスとメスの飼養頭数を表しています。メスに占めるオスの割合(オス割合と呼ぶ)は全国平均で、54%となっています。つまり、オスはメス頭数の約半分が平均的な頭数と言えます。オスは去勢牛となって30カ月令まで肥育し、と畜されます。繁殖牛となって20歳近くまで飼養管理されるメスのようには長く生きられないことと、10カ月令までに市場出荷されて他府県へ移動してしまうので、メスに比べて頭数が少なくなります。 しかし、宮城県、茨城県、群馬県。岐阜県などは、オス頭数がメスの頭数に近いか、あるいは茨城県のようにオス割合が153%になる県があります。宮城県は仙台牛、岐阜県は飛騨牛ブランドで、県産牛を県内で肥育する流れが出来ているからと考えられます。茨城県は常陸牛ブランドがあり、去勢素牛導入による和牛肥育が盛んな地域であることから、153%となっていることが考えられます。 兵庫県、宮崎県、鹿児島県はほぼ全国平均と同じ割合で、県内で肥育もするが市場を通じて素牛として、県外へも販売されている様子が伺えます。また北海道と岩手県はオスの割合が少ないことから、県内での肥育よりも肥育素牛として県外へ去勢牛として流出する頭数が多いことが考えられます。 三重県はオス割合が6%しかありません。メス肥育で有名な松阪牛の産地なので、メスが他府県から導入されるため、オス割合が極端に低くなったと想像します。滋賀県も30%と低いです。 私としては、宮城県や岐阜県のように県産牛は県内で肥育されるのが、飼養管理技術の向上や家畜改良を進めるうえで望ましいと考えます。県内で繁殖と肥育ががっちり手を組んで、切磋琢磨するのが理想形ではないでしょうか。 (つづく) 出雲畜産技術士事務所 代表 出雲将之 第1弾「幸せな牛飼いとなるための10カ条-1」 第2弾「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス-1」 第3弾「牛さんの気持ちになって考える」 第4弾「牛さんとわたし」 第5弾「和牛への支援と将来展望」 |