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データを分析して現状を正しく知る(出雲畜産技術士のコラム第6弾-2)

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2022年3月26日

2 メス牛頭数から読み解く

 家畜改良センターでは、個体識別番号で得られたデータを元に、HPに各種統計データとして掲載しています。これが、和牛の今後のトレンドを占ううえで有益な情報となっており、私はこの数値をグラフ化しながら、モニタリングしています。


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 今回は、和牛雌牛頭数の推移をグラフ化したのでご紹介します。出生直後からの頭数を表しているので、子牛、繁殖牛、肥育牛の全てを表しています。2009年から2016年にかけて雌牛頭数は減り続けて来ましたが、2017年からは増加に転じ2022年1月現在では1,123千頭が国内で飼育されています。2016年時の1,016千頭から107千頭増加し、1割近く増えたことになります。

 2009年からの雌牛減少は出生頭数の低下を招き、このことが市場上場頭数の減少につながりました。2015年から2019年にかけての枝肉価格上昇と相まって、去勢牛で800千円を超えるなど、子牛価格が大きく上昇した要因と考えます。

 2017年以降の雌牛頭数増加は子牛出生頭数増加につながり、家畜市場への上場頭数が増えたことや、枝肉価格がピーク時に比べると低下したため、肥育生産者の家畜市場での購買は弱含みとなり、子牛相場は低下に転じました。今後の子牛価格もこれまで同様、雌牛頭数の動きや、枝肉価格の高低など肥育生産者が強気で購買できるかどうかで左右されると考えます。繫殖農家も肥育生産者も、双方の経営が潤うようなWin-Winの関係となる子牛価格に落ち着くことが望まれます。

 脂肪交雑については改良が十分進み、普通でA4格付けになる時代となりました。最近の望まれる枝肉の傾向として、カブリや広背筋、バラが厚く、皮下脂肪が薄く、歩留まりが良い、しかもモモ抜けの良いものが引き合いが強く、枝肉単価にも反映しています。

 いづれにしても、繁殖農家は肥育生産者に喜ばれるような子牛となるために、健康で腹のできた子牛を育てることが重要です。そういう子牛が肥育されて良い結果を生むことを、現場で見て来ました。

(つづく)

出雲畜産技術士事務所 代表 出雲将之
 
 
~ 出雲畜産技術士のコラムシリーズ ~

第1弾「幸せな牛飼いとなるための10カ条-1

第2弾「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス-1

第3弾「牛さんの気持ちになって考える

第4弾「牛さんとわたし

第5弾「和牛への支援と将来展望
 
 

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