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戸田克樹のコラム
第293話「その初乳給与、ちょいとお待ちを!③」

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2020年7月22日

では、もし羊水がたまったまま初乳を飲ませてしまったらどうなるでしょう。

生まれたばかりの未熟な消化器官はまだうまく蠕動運動を行うことができません。流れ込んだミルクを小腸方向に速やかに流していくことができず、四胃が膨らんだ状態がしばらく続きます。子牛にとって、それはとても苦しい状態です(食べ過ぎて苦しいのに吐き出せない状態が続くのを想像してみてください)。飲乳欲が出てこないほど弱っているのに、これではさらに負担をかけてしまうことになります。また、膨らんだ四胃が横隔膜を圧迫するため肺がうまく膨らまず、空気を吸うことが困難になるかもしれません。

それだけではありません。ミルクは四胃で分泌されるペプシノーゲンやキモシン(池田vetコラム:牛の解剖5859参照)によって消化されます。しかし、羊水が多量にある中にミルクが入ってしまうと、羊水にジャマされてしまいます。せっかく四胃で消化酵素が分泌されていても、ミルクとそれらが十分に混じり合うことができず、カード形成に不具合が生じてしまうのです。そうすると、せっかく時間を意識してがんばって飲ませたのに、思ったより消化吸収されていない、という残念な結果になってしまうかもしれないのです。

つづく

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