2026年9月29日 *********************************************************** では、実際のところ、身の回りの物価はどのくらい上がっているのでしょうか。そこで先日、久しぶりに小生恒例の「スーパー牛肉価格調査」を行ってきました。調査といっても、大げさなものではありません。いつも行く同じスーパーへ行き、牛肉売り場をウロウロしながら値段を見る。ただそれだけです(笑)。しかし、同じ場所を何年も見続けていると、統計資料を眺めているだけでは分からない「変化」が見えてくることがあります。 今回、まず小生が気になったのは値段ではありませんでした。 「あれ? 牛肉売り場、狭くなってない?」 ということでした。以前より豚肉の占める面積が明らかに広くなり、牛肉がなんとなく肩身の狭そうな場所に追いやられているように感じたのです。さらに、和牛の量も少ない。もちろん、これは小生が住んでいる人口5万人弱の地方都市にある一つのスーパーを見ただけの話です。全国のスーパーが同じ状況だと言うつもりはありません。しかし、小生はこれ、結構重要なことではないかと思っています。なぜなら、スーパーにとって売り場面積は限られた「資産」だからです。利益の出ない商品を大量に並べ続けるわけにはいきません。牛肉の仕入れ価格が上がる。それに合わせて販売価格を上げる。すると、消費者が買わなくなる。そうなれば、スーパーとしては売れやすい豚肉や鶏肉の売り場を増やす。当たり前といえば当たり前の話です。牛肉価格の上昇は「値札」だけでなく、「売り場面積」にも表れ始めているのかもしれません。 さて、小生は過去にも第543話、第668話、第804話などで、スーパーに並ぶアメリカ産牛肉やオーストラリア産牛肉の価格を調べてきました。今回も、以前から調べていた「米国産バラ焼き肉用」の価格を確認しようと思ったのですが・・・ない。何度見ても、ない。たまたまその日に置いていなかっただけかもしれません。しかし、長年価格を追いかけてきた商品そのものが売り場から消えているというのは、値段が上がっていること以上に、ちょっと気になります。仕方がないので、今回は「豪州産肩ロースステーキ」の100g当たりの価格を調べてみました。結果は次の通りです。 上がりましたね~~。2018年の199円から2026年の398円。なんと、約8年間でほぼピッタリ2倍です。しかも興味深いのは、その上がり方です。2018年から2021年までは、199円 → 209円ですから、値上げ幅は10円なり。それほど大きな変化ではありません。ところが、その後は、値上げ幅が90円、99円となっています。つまり、ここ数年になって値上がりのスピードが明らかに速くなっているのです。「これをインフレと言わずして何と言うのか?」と思ってしまいます。もちろん、この商品の価格だけをもって日本全体のインフレ率を語ることはできません。実際、2026年8月の全国消費者物価指数は前年同月比1.9%の上昇です。ただ、多くの人はこの数値ばかり気にするのですが、企業物価指数は今年の7月では7.2%上昇してます。オイオイ、s滅茶苦茶上がってんじゃん! 2025年度の牛肉輸入量は約50万8千トンでした。前年よりわずかに増えてはいるものの、過去の水準と比較すると依然として低調です。特に冷蔵牛肉は約17万3千トンで、前年度比7.5%減。その中でも米国産冷蔵牛肉は約6万4千トンで、なんと18.9%も減少しています。ここで、今回スーパーで「いつもの米国産バラ焼き肉用」が見つからなかったことを思い出します。もちろん、一つのスーパーの商品構成と全国の輸入統計を直接結びつけることはできません。しかし、「米国産牛肉の輸入量が減っている」という統計と、「いつも見ていた米国産牛肉が店頭になかった」という小生の観察が同じ方向を向いているのは、ちょっと気になるところです。アメリカからの輸入が減れば、日本にとって重要性が増すのがオーストラリアです。実際、2025年度の日本の冷蔵牛肉輸入では、豪州産が約9万2千トンで53.5%、米国産が37.3%となりました。つまり、日本の輸入牛肉は徐々にオーストラリアへの依存度を高めています。しかし、そのオーストラリア産牛肉も世界中から引っ張りだこです。2026年7月の豪州産牛肉輸出を見ると、日本向けは2万4,744トンで前年同月より7%増えています。ところが、東南アジア向けは前年同月比50%増。中東・北アフリカ向けに至っては89%増となっています。これは結構重要です。昔の感覚なら、「アメリカ産が高ければオーストラリア産を買えばいい」で済んだのかもしれません。しかし、これからは、「日本がお金を出せば、いつでも好きな量の牛肉を買える」とは限らない時代になる可能性があります。日本だけが牛肉を食べているわけではありません。世界中の国々が同じ牛肉を買おうとしているのです。そう考えると、今回小生がスーパーで見た、「豪州産肩ロース100g398円」という値札の意味も、少し違って見えてきます。 単なる日本国内のインフレだけではない。円相場、海外の牛肉価格、飼料価格、人件費、輸送費、エネルギー価格。そして、世界的な牛肉の需要と供給量。さまざまなものが、この「398円」という小さな値札の中に詰まっているのです。そして、もう一つ小生が気になるのが、「需要が弱いのに価格が高い」という現象です。普通の商品なら、消費者が買わなくなれば値段は下がります。しかし牛肉では、国内需要が低迷しているにもかかわらず、輸入牛肉の価格が高止まりしています。実際、農畜産業振興機構さまも、物価上昇による消費者の生活防衛意識の高まりで国内の牛肉需要が低迷する一方、現地相場高などによって米国産冷蔵牛肉の輸入が大きく減少したとしています。これは、ちょっと怖い現象です。「牛肉が売れないから安くなる」のではなく、「高すぎるから買えない。しかし供給側にも余裕がないので、それでも安くならない」という状況になり得るからです。 そしてスーパーは、売れにくくなった牛肉の棚を減らし、豚肉や鶏肉を増やす。すると、消費者は牛肉を買う機会そのものが減っていく。この循環が進めば、「牛肉不足」という言葉の意味も少し考え直さなければならないのかもしれません。スーパーから牛肉が完全になくなることだけが「牛肉不足」ではありません。牛肉はある。しかし、高い。種類が少ない。以前買っていた商品がない。和牛の陳列量が減る。売り場が小さくなる。そして、消費者が牛肉を買う回数を減らしていく。そんな形で進む「静かな牛肉不足」もあるのではないでしょうか。ただ、先日お邪魔したコンサル先の農場では自社スーパーの特売日には滅茶苦茶牧場の牛肉が売れると話されておりました。 今回、小生が見たのは人口5万人弱の地方都市にある、たった一軒のスーパーです。ですから、これだけで、「日本は牛肉不足になった!」などと言うつもりはありません。むしろ現時点では、日本国内の牛肉そのものがなくなっているわけではありません。2026年6月の国内牛肉生産量は前年同月比1.9%増でした。だからこそ、このシリーズのタイトルは、 |
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