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蓮沼浩のコラム
第543話:食肉来航(しょくにくらいこう)

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2018年11月8日

 出張に出る時、新幹線や飛行機の中でコンピューターを使い仕事ができると本当に良いのですが、どうしても30分持たずに酔ってしまい仕事になりません。お酒の酔いは大好きですが、乗り物酔いはきついです!

 先日家の近くに新しくオープンしたホームセンターに行ってきました。
 すぐさま生鮮食品コーナーに行き、牛肉の状況を調べます。すると・・・・売り場面積のほぼ90%近くが外国産の牛肉で占められていました。国産の割合は非常に少ないです。ほとんど豪州産と米国産です。とにかく驚いたのは、肉色のきれいさです。海外から入ってきているものですが、驚くほど肉色がきれいです。技術革新が進み、相当冷凍やチルドでの保存技術が良くなっているのでしょう。

 また、値段も安いです。「豪州産牛こま切れ」でグラム149円。「豪州産牛肩ロースステーキ」でグラム199円。「米国産牛バラ焼肉用」がグラム279円など。正直、この量でこの値段????と肉の状態と安さに衝撃をうけます。まだTPPもEPAも始まっていないのに!!関税が低くなればさらに安くなります。

 そこのお店で働いている方の話では、食肉コーナーがお店で一番売れているそうです。当然購入して家で試食もしました。味に関しては個人差があるので何ともいえませんが、肉を噛みながら、しみじみとこれからの日本の畜産業のことを考えてしまいました。肉質のグレードが近い国内のホルスタイン肥育などは相当厳しい戦いが強いられることになりそうです。もちろん人口減少社会に突入しているので、F1や和牛も国内シェア獲得がむずかしくなってくることが考えられます。しばらくはオリンピック関連のインバウンドに期待するしかなさそうです。

 先日の新聞にはTPP11の発効が12月30日になると書いてありました。ついに始まります。そして、驚くことに日本以外の国は来年の1月1日から2年目に入ります。1年目はたった2日です。日本は行政事務が年度ベースということから来年の4月から2年目にはいります。あっという間に1年前倒しになります。これもちょっとな~~~~という感じですが・・・。そして来年の2月1日には日欧EPAも始まります。そしてアメリカとの貿易交渉もすすむはずです。まさに、「黒船来航」ならぬ「食肉来航」が目の前に迫っています。大きな時代の転換点であることは間違いなさそうです。新聞の見出しには「TPP年内発効 輸出メリット先行」と書いてありますが、その下にさりげなく「農業は競争激化」とあります。

 そりゃ、激化するでしょ!! 

 16年後にはセーフガードもなく、輸入量無制限でのガチンコの戦いになります。今のところ・・・ジャパン・ブランドで輸出を頑張るしかなさそうです。何かほかに妙案があればいいのだけれど・・・。

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