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池田哲平のコラム
牛の解剖131:雌性生殖器(14)

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2013年11月15日

 膣と膣前庭が明確に区別されている決定的な理由は“発生段階での由来が違う”からです。試験などでは非常に狙われやすく、もちろん国家試験でも最重要ポイントの一つです。学生の方々は覚えておいた方がいいですよ!(牛飼いの方々は「ふ~ん」くらいに聞いておいて結構です)

 以前、「牛の解剖125」で紹介したように、子宮や子宮頚管は左右の管(中腎傍管)が一つにくっついて出来たものなのですが、実はくっついて出来あがるのは子宮と子宮頚管だけではなく、膣まで含まれます。つまり、膣は子宮などと同じように体の中で出来あがるのです。

 一方の膣前庭はと言うと、最初は尿道や膀胱に続く空洞の一部でしかないのですが、その空洞の一部が徐々に膣の方へと伸びていき、最終的には膣とくっついて、あたかも最初から繋がっていた組織かの様に見えるようになります。

牛の解剖131:雌性生殖器(14)

 しかし、たまに膣と膣前庭がはっきり区別して見える時があります。実はこの両者が繋がった部分には“膣弁(ちつべん)”とよばれるヒダの様な構造物が形成される事があり、大きなものだと外子宮口を塞ぐように膜状になっていることもあります。初回種付けの時に授精ができなくて(シース管などが入っていかなくて)気付くケースが多いようですが、ウシさんではまれにしか形成されません。
 一方、ヒトを始めウマやイヌ・ネコといったペットなどでは膣弁は一般的に見られ、初回交配時に自然に破れたり裂けたりします。

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