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池田哲平のコラム
牛の解剖130:雌性生殖器(13)

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2013年11月8日

 子宮頸管からさらに尻尾に近い側に進んだ部分は“膣”になります。一般的に膣は、子宮頸管の外側の出口(外子宮口)の部分から外陰部に至る部分までのことを言いますが、厳密に言えば、膣は子宮に近い側の部分のことを意味し、外側(外陰部に近い側)の部分は“膣前庭(ちつぜんてい”)と呼ばれます。二つの境界ははっきりしない場合も多く非常にあいまいなのですが、ほとんどの場合は、腹側に見られる外尿道口(尿道につながり膀胱に至る孔、詳しくは過去のコラム「牛の解剖104」を参照)という孔が便宜的な境界として扱われます。
しかし、膣と膣前庭の両者に大きな違いはなく、実際の現場でも膣前庭も含めて“膣”と呼ぶことが多く、臨床の成書の中にも両者を区別していないものもあります。

 するとここで一つ疑問が出てきます。

 「そもそも膣と膣前庭を区別する必要があるのだろうか?」

 膣と膣前庭に大きな違いがないのであれば、両者をあえて分けて呼ぶ必要はないかもしれません。少なくとも、現場で診療を行っている限りにおいては、両方とも膣と呼んで話していても、コミュニケーションが取れないことは一切ありません。

 しかし、両者を区別しているのにはちゃんとそれなりの理由があるんです!(つづく)

牛の解剖130:雌性生殖器(13)

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