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池田哲平のコラム
牛の解剖129:雌性生殖器(12)

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2013年11月1日

 子宮体からさらに外側に向かっていくと、膣とをつなぐ部分に“子宮頚管”があります。子宮頚管は線維性の結合組織が豊富なので、その前後に存在する子宮体や膣と比べて非常に硬いです。直腸検査の際にはこの硬い子宮頚管を探し当てることが大切で、これを起点にして奥の子宮や卵巣を触診していくことになります。長さは約10cm、太さは牛の産歴や太り具合(脂肪の付着具合)によって変わりますが、直径3cmほどはあるのではっきりと分かるはずなのですが、直腸検査をやり始めた新人の頃は、なぜだがこれが分からないんです・・・・・・。不思議なものです。

 子宮頚管はこの硬さのため、管状になっている部分はほとんど広がりません。子宮が弾力ある平滑筋が豊富で拡張しやすいのとは対照的です。唯一、出産の際には子宮頚管の線維性結合組織が極限まで緩くなるので、胎子が出て来られるくらいにまで大きく広がります。
 また、子宮頚管はただ硬い管が一本まっすぐ通っているのではなく、その内側には3~4枚の輪状のヒダがあります。これが、人工授精や受精卵移植、または子宮薬注や子宮洗浄など、子宮頚管を通して子宮内に各種器具を入れる際に、非常に大きな障壁になります。とくに、一度も出産を経験していない未経産牛では、子宮頚管そのものが細く輪状ヒダも硬いので、苦労する牛もいます。発情期には粘液が分泌され、子宮頚管も拡張するので挿入は楽になりますが、非発情期(黄体期)ではガッチリ閉じてしまっている個体もいるので、より大変です。

牛の解剖129:雌性生殖器(12)

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