2013年10月25日 このように、ウシさんの着床はたくさんある子宮小丘に多胎盤が出来ることで完了します。しかしながら、この着床の過程は最初からしっかり完成された胎盤が形成されるわけではありません。 ウシさんの着床は、受精後17日くらいから始まると以前に紹介しましたが、その時、胎子側は特定の場所しか胎盤として機能しません。受精後から完成した胎盤ができるまでの間、胎子は卵黄嚢(らんおうのう)と呼ばれる胎子自身と同じくらいの大きさの袋とお臍を通じて繋がっているのですが、初期の着床はこの卵黄嚢が子宮小丘とくっつくことであり、そのくっついた部分は卵黄嚢胎盤と呼ばれます。卵黄嚢胎盤は一時的にできた仮の胎盤のようなものであり、その後、胎子全体を包んでいる外側の膜(尿膜絨毛膜:にょうまくじゅうもうまく)と子宮がくっつくことで真の胎盤である尿膜胎盤ができてきます。牛さんの場合、この尿膜胎盤が多胎盤としていくつも存在することになります。 む~、なんだかムズカシイ話になってきてしまいました……。 しかし、大切なのはここからです! ウシさんの場合、この卵黄嚢胎盤が尿膜胎盤へと移行して尿膜胎盤が完成するまでの間は、胎子の状態はとても不安定で、受精して胚として成長していたとしても流産してしまうことも多いです。卵黄嚢胎盤から尿膜胎盤への移行・完成は受精後20~40日の間に行われるので、この期間は母牛に大きなストレスを加えない事が大切で、妊娠鑑定をする場合も無理な子宮操作は避けなければいけません。胎子がいるかどうか子宮の隅々まで調べようとして、子宮を強く握ったり捻じったりすることは、尿膜胎盤を傷つけてしまったり、最悪の場合、尿膜胎盤が剥がれてしまって流産するなんてこともあり得ます。 わたしの場合、人工授精後20日代や30日代で妊娠鑑定を行って良くわからない場合はそこで無理して判定せず、数日開けてちょうど40日くらいの時に再鑑定するようにしています。 前の記事 牛の解剖127:雌性生殖器(10) | 次の記事 牛の解剖129:雌性生殖器(12) |