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池田哲平のコラム
尿石症を考える(21)

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2012年11月30日

 しかしながら、排尿時の異常が強い(排尿痛がひどい、排尿が細い、または排尿しない、など)場合や、直腸検査で膀胱に尿がたまって膨れ上がっている場合などは内科的な治療では完治しない場合が多いです。特に、膀胱の膨満がひどくて破裂しそうなときは、一刻も早く膀胱から排尿させることが大切です。つまりは、外科的に手術を行うことによって尿を排出させる必要があります。

 シェパードで行っている手術は大きく分けて2種類あり、1つは「会陰尿道瘻形成術(通称:尿道バイパス手術)」もう1つは「坐骨直腸窩膀胱瘻形成術」です。それぞれの手術の方法に関しては、蓮沼先生が以前のコラムで詳細に紹介している(第16話29話)ので細かい手順などは割愛します。

 ここで私が重要なポイントだと思っていることは、「手術をするならば早くやった方が良い」と言うことです。膀胱がパンパンに張っているときは緊急性が高いので、即手術となる場合が多いのですが、内科的な治療を数週間引っ張ってやって良くならなかったり、薬を飲ませている間は大丈夫だけどやめたら数日で再発するような症例で手術を躊躇していると、その間に膀胱や尿道の粘膜はひどく損傷し、最悪の場合、腎臓にも結石が出来たり、腎臓の組織が不可逆的な損傷を受ける場合が多いのです。膀胱も持続的に膨れ上がっていると自分で縮む力がなくなってしまい、自力排尿できなくなってしまいます。そうなると、手術をしてもその後の回復が思うように良くなくて、肥育牛として飼養していくのが難しい場合が多いです。

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