(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
加地永理奈のコラム
死産と胎盤停滞

コラム一覧に戻る

2024年3月6日

和牛繁殖農家さんで、後産停滞の母牛をみました。
その母牛は、分娩予定ではないのに陰部からの出血がみられ、子牛は残念ながら死産、分娩誘起により娩出されました。
分娩後12時間経過しても胎盤が排出されない場合に「胎盤停滞」と診断されますが、この母牛は娩出から2日が経過していました。後産が陰部から垂れていて腐敗臭もあり、汚染源となってしまうため、可能な範囲で除去し抗生剤も投与しました。

この母牛が今回胎盤停滞となってしまった理由としては、死産がもととなり、
・胎盤が十分に成熟していない段階での分娩だった
・予定日より前に分娩誘起を行った
・子牛による授乳がなかった
ことが関係したと推測しています。

通常の分娩であれば、分娩後数時間で子牛が母牛の乳に吸い付き、初乳を摂取します。哺乳の刺激により分泌されるオキシトシンには、子宮収縮を促進する効果があります。
しかし子牛が死産の場合には、この子宮収縮作用を併せ持つ哺乳がなく、子宮への刺激が足りないことで胎盤停滞のリスクもあがると考えられます。
残念ながら子牛が死産となってしまった場合には、胎盤停滞から子宮内膜炎を起こしてしまう可能性を積極的に回避するため、分娩から数時間以内にオキシトシン50IUを投与しておくのが良いと思います。次の受胎にはやく繋がりますように。
 
 
 
今週の動画
どこからが下痢なのか

|