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戸田克樹のコラム
第425話「久しぶりの尿石②」

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2024年2月1日

 今回は橋本獣医にも農場に来てもらい、執刀をお願いしました。オペ自体はさほど難しくはないのですが、「尿道にカテを通す」というこの1点が尿道瘻形成術の肝であり、もっとも難易度が高いポイントです(蓮沼獣医コラム「第19話 「遙かなる膀胱への道」 参照)。露出させた尿道を切断し、いざカテーテルを挿入しようとしたとき、ちょっとしたトラブルに見舞われました。それは「尿道内が無数の小結石でぎっしり」という状態だったことです。思わぬ展開に焦ってしまったため残念ながら写真を撮ることを忘れていましたが、ごま粒くらいの結石がぎゅうぎゅうに詰まっていたのです。カテはまったく進まず、まずは「ぎゅうぎゅうに詰まった結石を除く」というミッションを成功させる必要がありました。
 最初は鉗子を使ってみましたが、奥の方までとれません。苦戦していると、橋本先生が留置針の外筒をサフィードチューブにつなげたものをもってきてくました

 外筒のプラスチックが硬いおかげで結石をものともせず奥まで進んでくれました。そこまでいったら生理食塩水で勢いよくフラッシュ!!!すると小結石の一部は膀胱の方へ、一部は尿道から生理食塩水と一緒に流れ出てくれました。尿道内の小結石がなくなり、カテーテルが通るようになったため、いよいよ尿道峡突破というミッションにとりかかりました。

 そして・・・

 今回は2人とも大苦戦でした(泣)。尿道峡を突破できないまま時間ばかりが過ぎていってしまいました。カテーテルを出したり入れたり、直腸からの尿道マッサージで排尿を促してみたり、生理食塩水でフラッシュしながらカテを進めてみたり、それでもだめ。おじさんと若者が2人して心が折れかけていたそのとき、橋本先生が進めていたカテが膀胱にスルスルと吸い込まれていきました!そう、カテーテルがついに尿道峡を突破したのです。

「おーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」

 と声を出した私とは対照的に、橋本獣医師は「えへへ」とにんまりしていました。とにもかくにも成功です。こうして、尿道瘻形成術は無事に成功となりました。久しぶりに声を挙げて喜んだオペでした。

おわり
 
 
 
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