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蓮沼浩のコラム
「第19話 「遙かなる膀胱への道」」

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2007年2月8日

 前回お話したように尿道を切っても尿が出ない①や②の場合、まずはとにかく排尿させなければいけないので尿道からカテーテルを挿入します。単純に考えるとそのままカテーテルが膀胱まで到達しておしっこが出てきてめでたしめでたしとなるはずなのですが、予想に反してカテーテルは途中で止まり、何故か膀胱まで到達しません(涙)。残念ながら最後まで入っていかないのです!ここで多くの獣医さんが挫折してしまい、その牛さんは悲しいかな廃用となってしまうのです。では何故カテーテルが入らないのか!!実は牛さんの尿道にはちょうど下から垂直に上がってきた尿道が膀胱のほうへ90度曲がり水平になるちょうどその曲がり角あたりに「尿道峡」という場所があり、ここにおしっこの逆流防止弁?のような半月状のヒダ(尿道球腺の排出管が開口している盲管)がついているのです。イメージとしては雌牛の尿道下憩室みたいなものです。実は下から上がってきたカテーテルはこの「尿道峡」にあるヒダで止まってしまいそれ以上進めないのです。この神の造り給うたちいさなヒダが何とも小憎らしい!そしてここを突破するのが非常に難しい!でも何とか意地でも突破しなくてはいけないのだ!
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