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橋本匠護のコラム
雄が生まれてほしい、、、! 飼料(不飽和脂肪酸)編

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2023年10月23日

今回も、子牛の雌雄の産み分けについて紹介します。
紹介するのは「多価不飽和脂肪酸の給餌」が子牛の性別に影響するというものです。(以前、優秀な後輩に教えてもらいました!)

不飽和脂肪酸については、蓮沼先生がコラムで紹介されていますので、ぜひそちらを!
第678話:油脂と疾病予防 その1

結論から申しますと、「多価不飽和脂肪酸の給与で、雄が生まれやすい可能性」があるというものです。

2018年の報告を紹介します。

不飽和脂肪酸含有の脂肪酸カルシウムを飼料に添加し、生まれてくる子牛の性別を調べたところ、以下の結果が得られたそうです。

■ 脂肪酸カルシウム無添加 → 雄の割合が42%
■ 脂肪酸カルシウムを3%添加 → 雄の割合が70%
■ 脂肪酸カルシウムを5%添加 → 雄の割合が85%

この脂肪酸カルシウムには不飽和脂肪酸のリノール酸が含まれており、これが卵母細胞に取り込まれ、細胞内のシグナル伝達に影響することで、このような結果になったと考察されています。

「じゃあ、脂肪酸カルシウム与えてみようかな~」となりますが、ちょっと待ってください。不適切な脂肪酸カルシウムの給与は、エネルギー過剰からの過肥になるリスクがあります。過肥や急激なBCSの変化は繁殖性にとって良くありません。受胎率や妊娠率は大事です!

また、研究レベルで上手く行ったとしても、条件が複雑な現場において、どこまで応用できるかは不明です、、、、。

これは前回のコラムで紹介したAIの影響についても、同様のことが言えます。

前回と今回のコラムでは「AIのタイミング」と「飼料(脂肪酸)」の影響について紹介しました。以上を踏まえて、私がお伝えしたいのは、「子牛の性別に何が影響するかわからないということ」です。
もし生まれてくる子牛の雌雄が偏っている場合は、それは偶然ではなく、何か原因があるかもしれませんね、、、、!

以上、産み分け研究の紹介でした~

今回のコラムで紹介した報告はこちらです。
Polyunsaturated fatty acids influence offspring sex ratio in cows

 
 
 
今週の動画
抗生剤1

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