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橋本匠護のコラム
雄が生まれてほしい、、、! 人工授精のタイミング編

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2023年10月2日

今回は、子牛の雌雄の産み分けについて紹介します。
江頭先生のコラムでも、産み分けについて紹介されていますので、そちらも御覧ください。特に性選別に関する研究の情報が非常に興味深いです、、、!https://www.shepherd-clc.com/archives/16213

肉用牛においては性別によって、子牛セリでの価格に差が出ることが多々あります。
地域やタイミングにもよると思いますが、去勢のほうが10~20万円ほど高くなることがあります。そのため、母牛として残す場合を除き、雄のほうが生産農家さんの経営的には良かったりします。

このような背景もあり、古くから雌雄の産み分けに関する研究がなされています。
今回は、「人工授精(AI)のタイミング」の影響についてです!

ご存知の方も多いかもしれませんが、おさらいさせてください!
結論から申しますと、「遅いタイミングでのAIで雄が生まれやすい」というものになります。

2004年の報告になりますが、以下の結果が得られています。

■ 発情開始から8~18時間後のAI → 雄の割合:26%
■ 発情開始から18~30時間後のAI → 雄の割合:40%
■ 発情開始から30時間以上後のAI → 雄の割合:72%

この結果は、精子の受精能獲得のタイミングの違いによる影響であると、論文中では考察されています。

これだけ見ると、「じゃあ、遅めにAIしたほうがいいじゃないの!」となりますが、以下の注意点があります。

■ 30時間以上後のAIでは受胎率が低下している。
■ そもそもAIのタイミングは雌雄に影響しないとの、報告もある。
■ 発情の開始を確実に見極めるのは難しい。
■ 雌雄決定に影響する様々な要因が他にもある。 など

こういった事情もあり、広く実用化とまでは、いっていないのかもしれませんね、、、
次回は、別の産み分けの試みについて紹介します!

今回のコラムで紹介した報告はこちらです。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/
S0093691X04000135

 
 
 
 
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