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江頭潤将のコラム
No.11 家畜の改良技術 その10

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2020年11月20日

○家畜の雌雄産み分け技術

 家畜である牛は性別によってその経済的価値が変わってくることは周知の事実であるかと思います。乳牛であればお乳を出す雌の方が良いですし、事前に分かっていれば更新の計画も立てやすくなります。和牛の肥育用素牛としてはより増体が期待できる雄(去勢)の方が価格は高くなります。また、枝肉成績の良い母牛の後継牛を作りたいのに雄ばっかり生まれてしまい(これはこれで良いことですが)、次こそはどうしても雌が生まれて欲しい、ということはしばしばあるかと思います。このように雌雄産み分け技術が畜産経営にもたらすインパクトはとても大きいものです。

 生まれてくる子牛の性別を人為的にコントロールすることは人工授精技術や受精卵移植技術が開発されたあとも畜産技術者の長年の夢でもありました。今日では牛の雌雄産み分けは技術開発が進んで精液および受精卵の段階で実用化されています。
 詳しくは次回以降に見ていきたいと思いますが、精液ではX精子とY精子を機械を用いて分ける”性選別”、受精卵では細胞片を切り取ってDNAを調べる”性判別”、と違いがあります。さらには性選別精液により受精卵を生産するという方法もあります。
 
 性別をコントロールする方法については様々な研究が行われてきましたが、実用化に至ったものはとても少ないです。私も雌雄産み分け技術に関する試験をほんの少しだけ行ったことがありますが、新しい技術を生み出すことの困難さを身をもって知ることができました。ですので、現在実用化されている雌雄産み分け技術も長い年月と莫大な費用と研究者・技術者の計り知れない努力の賜物であり、本当に本当にとてつもなくすごいことだと実感しているところです。
 
 それでは雌雄産み分け技術編スタートです!(続く)

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