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松本大策のコラム
夏の終わりのケア

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2023年10月7日

 今年もまだまだ暑いですね。もう10月ですよ。地球温暖化についてはいろいろな説が唱えられていますが、それでも年々暑さは厳しくなるようです。
 例年、夏バテは10月が最も多く見られ、肥育牛の死亡や筋肉水腫、肝炎などの被害も10月が最も多く見られています。今年は、さらに遅くまでこの障害が続くかもしれません。
 ということで、今回は夏の疲れを診断する方法と、夏バテを取り除くためにはどうしたらよいか?についてお話ししようと思います。

 以前、熱中症に注意のコラムでも書かせていただきましたが、やはり夏バテの牛さんも食欲低下で発見されることが多く、その診断には、呼吸が速い、流涎(ヨダレ)、体温の上昇を見ていきます。特に今年は、体温の下がらない子も多く見かけます。通常は肺炎などの炎症性の発熱であれば、スルピリンなどの解熱薬やデキサメサゾンのようなステロイド性の消炎剤で下がるのですが(特にデキサなどのステロイドは強力に体温を下げます)、特に今年は熱が下がりにくい個体が多く見られます。
 そういう個体が見られたら、まず念のため血液検査で肝臓その他の異常がないか診断し、異常がなければ、血液をさらさらにする重曹注や酢酸リンゲルなどとレバチオニンなどのビタミンB群の注射を行います。また、人間が土用の丑の日にウナギでビタミンAを補うのと同じように、ビタミンAやD、E等の脂溶性ビタミンも補ってあげます。
 それから体温の下がりにくい子には、熱中症の治療でもお話ししたように、一度水でしっかり冷やしてあげます。パンカルのようなパントテン製剤は、強肝剤としてだけでなく、全身の細胞にエネルギーを補って元気にしてくれるので、とても効果的です。
 シェパードでは、バイオ科学のリカバリーMというパントテン酸他全身の細胞活性化に重要な水溶性ビタミンを含んだ添加剤も100g/日与えてもらっています。
 それから、牛さんの体温産成部位のトップはなんといっても第一胃です。ここの発酵が異常になると発酵熱が増えて体温上昇の原因にもなります。アースジェネターなどの生菌剤も少し増やして給与します。

 栃木県は今年は特に暑さが続いているので、これでもなかなか食欲の回復が見られない子もいますし、水でしっかり冷やしてあげても翌日には体温が上方している子もいます。
 そういう子は、忍耐強く治療していくのですが、その中にそこそこの割合で「牛白血病」の個体がいるので、そこだけは注意してください。抗体価のチェックだけでなく、リンパ球数やリンパ球の細胞診(染色して顕微鏡で異常リンパがないか検査する)が必要です。
 最近は、牛白血病が目立って増えている印象です。この対策については別の日にお話しします。

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(今回のリンクは本文とは関係なく牛さんの頭の良さです)

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