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松本大策のコラム
種牛とケンカして病院送り

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2023年9月30日

 このたびは、みなさまに本当にご心配、ご迷惑をおかけしました。
 3月の28日に種雄牛の診察時に僕の不手際で大けが(だったらしい)を負ってしまい、長いこと仕事を休むことになってしまいました。
 当初、ホームページの告知で(この頃僕は意識不明だったので目を通していません)、「松本は連絡が取れない状態です」と書いてあったため、いろんな方が「死んだのか?」とか「とうとう捕まったらしい(何の罪や!)とか心配なさったとうかがいました。
 4ヶ月の入院を経て、現在は通院リハビリをしながら、LINEやメールでできる仕事をこなしている状態です。ようやく少し落ち着いたので、事の顛末を報告します。

 3/28に一人で巡回していたときのことです。1頭で小屋に入っている種雄牛のところに来たとき、その牛さんが脚を傷めて立てないように見えました。種雄牛は、大変大きく気も荒いため、通常は2~3人がかりでロープを使い左右から保定した後でないと、診察どころか部屋にも入りません。
 しかしそのときは、脚を傷めているのが心配で焦っていたのと、種雄牛相手でも自分は大丈夫だろう、みたいな慢心があったのだろうと思います。一人で小屋に入ってみると、いきなり牛さんがこちらに向かい前脚を掻き上げてきました。「あ、これはやばいな」と思い自分の脚と背骨だけは護って脱出しようと思ったのですが、でかい割には小回りのきく牛さんですので、壁との間に挟まれて頭突きで体当たりをくらい、しかもそのままぐいぐい押しつけられてしまいました。角は切ってあったのですが、切った後が拳くらいの岩のように硬く固まっていて、自分の骨の折れる音(すごく軽い音でした)を聞きながら「こいつ、いつまで押しつけてくるんだ?」と思いながら気を失いました。
 気がつくとどうやって抜け出したのか、小屋から出て倒れ込んでいました。牧場のスタッフが通りかかって救急車を呼んでくれたのですが、そこから意識がなく、気がついたのは20日も経って救急病院のICUでした。肋骨36カ所、左右の鎖骨2カ所、38カ所の骨折と肝臓破裂、血気胸で全身むち打ち状態でした。最初は自発呼吸もおぼつかなく、家族は「延命治療をするか?」という書類にサインさせられたそうです。
 YouTubeにも動画をあげてあるのでレントゲン写真とか気持ち悪くない方はご覧下さい。
 https://www.youtube.com/watch?v=m4cHwTnNadY

 20日間も意識不明で、ようやく意識が戻った時は、自力呼吸がうまくできないために気管にチューブを入れて陽圧呼吸していただいていたため、チューブを抜いた後も声がまったく出せず、20日も寝たきりでしたので、足も腕も痩せて細くなり、動かすこともできませんでした。腕が自分の重さで持ち上げられないというのは新鮮な驚きでした。
 2週間ほどで腕が少し動かせるようになっても、感覚の異常で、口を触ろうとしているのに、手は喉を触っている、なんて信じられない経験をしました。あと幻覚やせん妄状態が1週間ほど続き、ヤクをやってる人の感覚ってこんな感じなのか?と客観的に見ていました。

 まったく立つことも腕を上げることもできない状態から、リハビリの先生たちのおかげで、なんとか自力で立つことができるようになるまでひと月もかかりました(まだこの時は歩くことはできなかったのですが)。
 その後2週間程かけてなんとかペンギン並みに歩けるようになったので、リハビリ専門病院に転院し、つながりの悪かった鎖骨のオペもして、どうにか全身痛いながらも日常生活が送れるようになったので退院しています。なかなか身体の動きは戻らないのですが、僕はヘラヘラしているのと、胸とか変形しているのですが服を着ていると外見上どこも悪くないように見えるのとで、家族ほか周囲は容赦してくれません(笑)。
 おかげで実践的なリハビリができています。10月くらいからソロソロと現場にも復帰できたらと考えています。
 
 
 
 
今週の動画

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