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加地永理奈のコラム
鼻詰まりの子牛

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2023年3月15日

生後3日目で、呼吸が速く、初乳もその後のミルクも自力で飲めていない、という状態の子牛を診察しました。呼吸のたびにブーブーという鼻息音が強く、お腹をペコペコとへこませて苦しそうに呼吸していました。
これは緊急性が高いな、と思いながら原因を考えます。
肋骨骨折があり、折れた骨が肺に刺さって痛く苦しいのではないかと考え、肋骨をなぞって触りましたが、骨折部位は確認できませんでした。
聴診器を使ってみると、やはり肺の音はゼェゼェという音が強く聞こえました。一方お腹の音は大丈夫で便もふつうに出ていたので、お腹が痛いわけではなさそうです。
このことから、きっと胎水を飲んでしまって肺に入り、それがとれずに肺で炎症を起こしているのだろうと考えました。誤嚥性肺炎ですね。呼吸が苦しく息が続かないためにミルクも自力で飲めなかったのでしょう。
この日は肺の炎症を早くとってあげたい!ということで、気管内注射により薬液を肺へ直接送り込む治療を選択しました。
そして翌日にもう一度診察すると、子牛は変わらず強い鼻息音で苦しそうな状態でいました。
これはまずい、なんでこんなに鼻腔から音がするんだ!?と思い切って鼻に指を入れてみると、粘液とオガの塊と思われるものが指についてきてポロっと取れました。すると速かった呼吸や鼻息音が途端に穏やかになり、なんと直後からミルクも自力で吸って飲むようになりました(;_;)
今回は鼻詰まりが苦しかった一番の要因だったようです。まさか鼻をほじって状態が落ち着くとは思いませんでした。数日間、抗生物質の継続と鼻腔洗浄もおこなってもらい、ひどかった肺の音も改善することができました。

 
 
 
 
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