2022年1月7日 さて、今回は皆さん一度は悩まされたであろう牛の肺炎、この病気に対する“気管内注射”という治療法についてお話ししたいと思います。 まず方法は、ホスミシン2gを生食20mlほどで希釈し(炎症の程度に応じてデキサメタゾンを1ml程混ぜることもあります)、ハッチに入る程度の子牛であれば5ml程、150kgを超えるくらいの牛には10ml程を注射器を使用して気管内に直接注入するというものです。 子牛の場合は皮膚が薄く皮下脂肪もほとんどないので針が短く細い翼状針を使いますが、ある程度身体の大きい牛だと針先が気管内に届かないので長めの針を使います。シリンジを軽く引くと空気が入ってくることを確認したら薬液を流し込みます。 治療の考え方としては、全身に投与して至る所に分布した残りを感染部位に届けるよりも、直接薬を届けるほうがより効果的ではないかというものです。また、間質や血管の壁に炎症がおこり分厚くなってしまったことで、血管への酸素の取り込みがうまくできないような状態(逆に言えば、血液中の薬も届きにくい?)の時により有効ではないかと考えています。実際に、抗生物質や抗炎症剤の全身投与ではなかなか治りが悪かった子や、身体を揺らして一生懸命呼吸していたような状態の子でも、投与して翌日には肺雑音が綺麗になくなったりとびっくりすることも多いです。 ただ、少なからず気管に炎症を起こすリスクがあることや(実施は2回までにしています)、肺胞内に液体が充満し溺れたような状態にならないよう投与量に注意する必要はあるのでご注意ください! 前の記事 クリプトスポリジウムについて色々と② | 次の記事 子牛の疝痛 |