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加地永理奈のコラム
症例紹介:γGTPが高い子牛

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2023年3月1日

今回は症例紹介です。
約1ヶ月齢のホルスタイン子牛で、下痢とミルク飲みの悪い状態が1週間続いたので血液検査をおこないました。
すると、胆管の異常を知らせるγGTP778 U/Lと目を引く高値になっていました。
γGTPは30以内を基準値としていて、胆汁分泌の異常で高くなります。また、初乳をしっかり摂取できた子牛だとこのくらい高値になりますが、1ヶ月齢にもなれば減少しているはずです。
肝機能の指標としてもう1つ一緒にみる数値、肝細胞が破壊されると上昇するASTは、130 U/Lと少し高値を示していました。
γGTPが基準値を超えてはるかに高いため、膵炎の可能性も考えなくてはいけません(過去コラム「膵炎の診断」参照)。
追加で、ビリルビンとアミラーゼの値をチェックすると、総ビリルビン0.2 MG/DL、血清アミラーゼ123 U/Lという結果でした。
アミラーゼは膵臓の破壊や炎症で上昇します。牛のアミラーゼの基準値は41.3~98.3と教科書にあったので、123は少し高い。
もしかするとこの子牛は、胆汁を分泌する胆管と膵液を分泌する膵管がくっついているか、すぐ近くで開口していて、胆汁が膵臓に流入したために膵臓でトリプシンが活性化し、膵炎を引き起こしている、そしてトリプシンの胆管逆流で胆管由来の数値であるγGTPが高値を示していた、と考えました。
処置は炎症反応を抑えるためにデキサメサゾンと抗生物質の投与を数日間、細胞活性のためにリカバリーM 20gを10日間お願いしました。ウルソで胆汁分泌を促進すると、また膵臓に逆流も考えられるとのことで今回は使用していません。
今は経過観察中ですが、検査日から1週間経過してミルク飲みは回復しているとのことです!血液検査も再度おこなう予定です。
 
 
 
 
今週の動画
ナックル子牛 副木固定にチャレンジ

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