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加地永理奈のコラム
症例紹介:先天性腸閉鎖(アトレジア)その2

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2022年8月31日

ふたたびアトレジアと思われる子牛と出会いました。前回は試験的開腹により確定診断がつきましたが、今回はエコー検査と血液検査を実施しました。
今回はF1子牛で、前回と同様に「昨日生まれた子牛の胎便が全く出ない」「初乳は飲んだがそれ以降ミルクを飲まない」という稟告でした。直腸内に便はなく血と粘膜のみ付着してくる、肛門を刺激しても排便がない、という状態のため、潤滑作用の強いポリアクリル酸ナトリウムをお湯に溶かして経口投与と浣腸をしました。また初日に採血も行いました。
補液と抗生物質で翌日まで経過を観察しましたが、胎便が全く出ない、ミルクを飲まない、直腸内に何もない、という状態に改善はみられませんでした。ただ腹囲膨満がみられなかったため、エコーにより腹腔内を確認することにしました。
右腹部を触診すると、唸って痛がります。そこへエコーをあてると、腸全体が2-3cmかそれ以上に拡張して内容物が貯留していました。腹部膨満までは至っていませんでしたが、腹圧がかかっていて痛かったと思います。

初日の血液検査結果からは、検査項目で特に基準値から大きく外れる値はなく、γ-GTが1692U/Lと初乳がしっかり吸収出来ていたことが見てとれました。このことから、小腸までは繋がって機能していた、小腸より後の盲腸や結腸で閉鎖部があったのではないかと考えました。
今回はエコーで盲端を見つけられず開腹も行わなかったため、アトレジアという診断は推定になりますが、それでも十分な情報をあつめることができました。原因は遺伝的なものを疑って情報収集中です。
 
 
 
 
今週の動画
body condition score (part2) UV法について その2

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