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加地永理奈のコラム
症例紹介:先天性腸閉鎖(アトレジア)

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2021年9月15日

「昨日生まれた子牛の胎便が出ない」という稟告で、生後1日齢のホルスタイン種子牛の診察をしました。
胎便は粘り気が強く、詰まることがよくあります。肛門を刺激しても排便がなかったため、塩類下剤である硫酸マグネシウムをお湯に溶かして経口投与しました。
翌日も排便は確認できず、潤滑作用の強いポリアクリル酸ナトリウムをお湯に溶かして経口投与しました。
第3病日に浣腸も試みましたが、入れたものがそのまま出てきます。腹囲膨満にもなっていたため、農場の方と相談し試験的開腹をさせてもらいました。

開腹すると、盲腸が2つ!

写真左は正しい盲腸でしたが、写真右は結腸が閉鎖して盲嚢をつくっていました。大きく膨らんだ盲嚢内は胎便が充満していました。肛門から続いていた直腸は壁が非常に薄く、内腔が透けて見えるほどでした。これらを縫合してつなげるには、組織ももろく難しいです。

胎便が全く出ない、初乳は飲んだがそれ以降ミルクを飲まない、直腸内に何もない、腹囲膨満、等の症状が揃った場合、こういった生まれつきの腸閉鎖が考えられます。ホルスタイン種で特に多くみられるそうです。
今回は原因追及のために開腹したことで確定診断ができました。エコー検査をすれば内容物が貯留し拡張した結腸が確認できたかもしれません。

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