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松本大策のコラム
子牛の下痢が多発する原因の一つ

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2022年8月8日

 今年の夏は本当に変な天気ですね。猛暑が続いたかと思うと、大雨で気温も下がってしまったり、そうかと思うと急にまた猛暑に襲われる。人間も牛さんも対応が大変です。

 5月くらいから子牛の下痢も増えてきますよね。原因はいろいろあります。まずは、春先から冬眠していた寄生虫が起きるスプリングライズという現象があり、なぜかは解りませんが、冬場は牛さんの体内でも寄生虫は眠りについて(活動を控えて)いるそうです。
 それが、春先に動き出すので寄生虫性の下痢が発生するわけです。ただ、こちらは昨今のイベルメクチン系駆虫薬(アイボメックトピカルとか)の普及で減少しています。

 それから、気温も湿度も高くなり人間でも食中毒が増えてきますよね。あれと同じく食中毒細菌(ブドウ球菌とかサルモネラ菌とか)による細菌性の下痢も増えてきます。こちらは、適切な抗生物質を使えば治りが早いのですが、最近では抗生物質の耐性菌が増えてきました。特に耐性化が進んでいるタチの悪いのが大腸菌です。
 こういう耐性菌対策としては、以前お話ししたアースジェネターなどの静菌剤の大量投与によって善玉菌が作り出す抗菌物質でやっつける方法やリーキーガット(2021年10月5日掲載)を治癒し細菌毒素(カビ毒の10万倍もの毒性と言われています)を吸着してくれるバリウム(ヒューベファーマ社)の投与をお勧めしています。

 冬場と違ってウイルスの被害は減ってきますが、夏場は血液中のビタミンAなども低下して粘膜の機能が低下する、という問題も出てきます。
 粘膜の機能が低下すると、牛さんの第一胃などで炭水化物から発生するVFA(揮発性脂肪酸というお酢の仲間)の吸収が低下して、第一胃をはじめとする消化管内が酸性に傾くルーメンアシドーシスという状態になります。消化管内が酸性に傾くと、酸によって消化管が傷まない様に水分が分泌されて酸を薄めようとするのです。それで便の水分が増加して軟便や下痢がなかなか治らず、抗生物質などを与えても全く改善しない、ということが起こります。
 もしそれが疑われるなら、どこか1カ所のマスに「鉱塩アルカリックス(ゼノアック)」をおいてみましょう。これは牛さんが舐めると含まれている重曹の働きで消化管内の酸性を改善してくれるのです。これで下痢が改善してくる様なら、ルーメンアシドーシス性の下痢だと考えてよいと思います。
 重曹を添加したり、重曹をルーサンペレットに含ませたものなども効果があるのですが、僕は鉱塩タイプをおすすめしています。それは、牛さんが舐めるという行為で、牛さんの涎をたくさん飲み込ませることができるからです。牛さんの涎には重炭酸イオンという酸を中和する成分が含まれているからです。

 佐賀の平田畜産というコンサル先でアルカリックスを設置していただいたところ肥育牛も夏場の食欲が向上しました。酪農では重曹の設置は常日頃から行われていますしね。
 
 
 
 
今週の動画
【臍ヘルニア】牛さんにコルセットしてみた

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