(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
松本大策のコラム
リーキーガット?

コラム一覧に戻る

2021年10月5日

 勉強熱心な農家さんは聞いたことがあると思いますが、僕はその概念しか知らず、またそれを防ぐことの効果というか、威力を最近目の当たりにしたので、コラムでもお伝えしようと思います。

 まずリーキーガットの意味についてお話ししましょう。誰かが情報をリークした、ってよく言うでしょ?リークとは「漏れる」という意味です。ガットはガットギターのガット。昔のギターは、羊の腸で作った弦を使っていたので「腸」の英語である「ガット」ギターと呼んでいました。それでリーキーガットとは、腸粘膜表面の構造が壊れて、腸粘膜から腸内のバイ菌や菌体毒素が侵入したり、腸粘膜下の電解質などが漏れ出したりする、つまる「ダダ漏れ」の腸、と言う意味で使われます。


図1:リーキーガットの図(バリウムのYouTubeより)

 ヒューベファーマ社の資料によると、菌体毒素はカビ毒の100,000倍強力な毒性を持つそうです。大腸菌などが壊れたときに出すエンドトキシンが、大きな肥育牛でも肝炎や全身ズルを引き起こすことを見てもその怖さは解りますよね。
 こうして「ダダ漏れ」の状態になった腸では、ひどい下痢や長引く下痢が起こりやすいということは容易に推測がつきますよね。それだけではなく、今度は腸粘膜から侵入したバイ菌が、子宮内膜炎や乳房炎の原因にもなるそうです。

 僕は肥育牛で長年、第一胃粘膜の健全性が失われると、エンドトキシンの影響による肝炎やズル(筋肉水腫)が起こることを経験して、第一胃の健全性を護ることで、そういった病気の発生を防いできました。しかしここのところ、検査をしても異常が無く、また抗生物質や抗原虫薬、駆虫剤、生菌剤、胃汁投与など、何を使っても治まらない水様下痢に何例か遭遇しました。ちょうどそのとき、卒業生の池田獣医師から「バリウム」という添加剤を教えてもらい、この添加剤が効率的にリーキーガットの修復をしてくれるということで、改めてリーキーガットの勉強をしたわけです。


図2:バリウムの特徴の図(バリウムのYouTubeより)

 早速、何をやっても治らなかった下痢の育成牛に与えてみました。3日間20g与えてもらった結果(その後は10g)、ずっと水のようだった下痢が、軟便に変わったのです。


写真1:バリウム投与前


写真2:バリウム投与後

 効果についてはまだまだたくさん症例を積み重ねなくてはいけませんが、試してみる価値はあるのではないでしょうか。

|