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笹崎直哉のコラム
再検査の重要性 その7~繁殖成績改善を目的とした血液検査~

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2022年4月19日

前々回の血液検査シリーズの続きになります。ご了承ください。)
検査結果をみると、気になる項目が2つありました。

『ビタミンA』と『T-CHO : 総コレステロール』です。

まずはビタミンAからお話します。

黒毛和牛繁殖雌牛であれば、育成、経産関係なしに80 IU/dl 以上は欲しいです。農家さんもビタミンAの数値の低さに驚いていました。

では繁殖牛をベースにビタミンAの数値低下の原因について考えてみましょう。

まずは粗飼料中に含まれるβカロテンの含有量が少なく、結果的にβカロテン由来のビタミンA給与量が賄えていないこと。
次に分娩前後のストレスが大きく、それに伴いビタミンAが著しく低下しているパターン。
それから粗飼料中の硝酸態窒素濃度が高く、ビタミンA破壊が進んでいることが主な原因ではないかと思いました。
なおこちらの農家さんは粗飼料としてイナワラとバミューダ(イナワラ主体)を当時給与されていました。

ここでビタミンAの低下は繁殖牛でどういった弊害をもたらすのか、おさらいしておきましょう。

ビタミンAの低下は排卵遅延を招いてしまうと言われています。これは文字通り発情後に行われる排卵(卵胞膜の一部が破れて卵胞内の卵子が放出される現象)が通常よりも遅れてしまうことを指します。たまに排卵遅延になると卵胞嚢腫という繁殖障害の原因疾病に移行するケースもあるので要注意です。

今回かかりつけの授精師さんは『発情時のグラーフ卵胞が硬め』とおっしゃっていました。これはビタミンAの低下が関係しているのではないかと推測しました。

次回は『T-CHO : 総コレステロール』について、母子分離のタイミングと自然哺乳、人工哺乳の話をエネルギー収支の観点で紹介し、どういった改善案を農家さんに提示したのかをお伝えしますね。

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