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笹崎直哉のコラム
再検査の重要性 その8~繁殖成績改善を目的とした血液検査~

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2022年5月17日

皆様お疲れ様です。前回に引き続き黒毛和種繁殖雌牛の血液検査のお話です。前回はビタミンAの話について掘り下げましたが。今回はT-CHO (総コレステロール)について詳しくみていきましょう。

ご覧のようにT-CHOは平均値でみると137.4 mg/dl とやや高値でした。私の肌感覚だとステージにもよりますが100~110 mg/dl を推移するのがスタンダードと考えています。
ではここでT-CHOは何の指標になるのかを考えてみましょう。大きく分けて3つです。
まず1つ目はエネルギー代謝です。黒毛和種繁殖雌牛では乾物摂取量に比例してT-CHOが上昇すると言われています。つまり食欲の有無を数値で判断することができます。一方、脂肪酸カルシウム製剤や油脂を多給した場合も同様に数値が上がることがあります。これは余談ですがT-CHOの数値がある程度そろった牛群であれば、個体ごとの乾物摂取量のバラツキがないと判断できるかもしれません。

次に肝機能です。コレステロールが合成、分解されるのは肝臓ですので、乾物摂取量に対してT-CHOが基準値より高いもしくは低い場合には肝臓機能低下を疑います。その際はAST(GOT)、γ-GTPなどの項目も同時にチェックしてもいいかもしれません(今回は検査していませんが)。

3つ目は繁殖成績との関係です。実はコレステロールはステロイドホルモンの材料になります。したがって低すぎる場合は発情の不明瞭化など、繁殖成績が悪化する可能性があります。

今回の採血した5頭全体の外貌所見として腰角~大腿骨関節~座骨端の3点、肋骨部、尾根部の肉付きは比較的良好でボディコンディションスコアは高めでした。つまり過肥傾向だったのです。今回肝数値をチェックしていないので肝臓の状態は分かりませんが、T-CHOの結果からエサをやや多めに与えてしまい、太らせていることが疑われます。こちらの農場では分娩後の母子分離が1週間とかなり早いことから、お母さんは子に対して母乳を作るエネルギーは少なくて済みます。残ったエネルギーは子宮の回復や卵巣等の生殖器に利用されていきますが、一方で過肥傾向が続いてしまった場合、卵胞嚢腫などの繁殖障害や難産の原因にもなるため母子分離のタイミングで慎重に給与飼料を減量するか、妊娠維持期に減量する必要があります。注意点としては繁殖成績をベースに評価するとやや過肥傾向の方がいいという農家さんもいらっしゃいますので、いろいろな観点から総合的に評価し減量が必要かどうかを決めると良いかもしれません。

さてこちらの農場は今回の結果に基づいて、どんな飼養管理内容の変更を行ったのでしょうか。その具体的な内容は次回(最終回)でお知らせします。

実は今回の牛さんは再検査を実施しています。初回から2年後(かなり時間が経ってます!!汗)にたまたま血液検査することがあり、結果をじっくりと見ました。なお④の牛さんは繁殖供用を中止したため、残念ながら検査できていません。また初回で行った検査項目の全てを検査できませんでした。

いかがでしょうか。改善傾向にあるとは思います。一番のポイントは繁殖成績も改善しているのかどうかです。
こちらも最終回で紹介させていただきますね。
 
 
今週の動画
【短編動画】牛さんがエサを残した原因が意外なことだった

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