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笹崎直哉のコラム
分娩で気になっていたこと

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2022年5月31日

私事ですが、阿久根で開催されたゴールデンウィークのイベントでブレイクダンスを披露させていただきました。「お客さんを笑顔にさせるぞ!」という意気込みで練習していたのですが、たまたま家族連れのお客さんが多いとの情報を入手し、アニメキャラクターのコスプレをして踊ったところ、これまた大成功でした。

さて今回は私が駆け出しの頃に疑問に思っていたことを今更ながら紹介していこうと思います。テーマは分娩です。

① 人為的な破水はなぜNGなの?
「自然な破水を待とう。人為的に破ってはいけないよ。」このフレーズがよく先輩から言われており、助産で呼ばれた際、タイミングが早くまだ破水が済んでいなかった場合は焦らず待つようにしていました。よくよく調べてみると尿膜や羊膜の中にある胎水は、子宮頸管の拡張を促進し、子宮の収縮を促進するファーガソン反射の刺激となるということや、産道を通過する際に胎子の頭を保護するのに役立つと記載されていました。さすがに陣痛微弱や胎子失位などのケースでは破水を待たずに整復を優先させた方が良いのですが、なるべくお母さん牛のペースに合わせて待ってあげる方がベターなのかもしれません。

② 羊水の色が白色半透明じゃないときって?
正常な羊水は白色半透明ですが、茶色っぽいときや赤色になっていることがごくまれにあります。新しい子牛の科学~胎生期から初産分娩まで~(発行:緑書房)によると「茶褐色は胎便、赤色は胎盤出血や胎子死、悪臭がある場合は早期の胎子死が推測される」と記載されていました。また羊水が胎便で染まっている場合、子宮内での低酸素症との関連が報告されているとのことでした。私の肌感覚では赤色だった場合、早期胎盤剝離を伴っているケースが多く緊急性があるものと判断しています。いずれにせよ羊水が茶褐色や赤色であった場合は一度産道内に手をいれて胎子や子宮の状態を精査したり、かかりつけの獣医さんに診てもらったほうがいいかもしれませんね。

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